"ATMで呼ばれた「奥様」" 第4話
悠馬はくの属会社の営業だった。
営業に向いていないとすぐ分かった。
の目を見て話せないし、自分で言い始めた言葉を途で止める。
けれど、をよく見ていた。
父の命、私が《実り》で泣いていた、悠馬もにいた。
彼は声をかけなかった。
帰り際、私のコーヒー代だけ払ってていった。
次に会った、私は尋ねた。
「どうして何も言わなかったの?」
悠馬は聞から目をげずに答えた。
「泣いてるに『丈夫ですか』って聞くのは、違うとったので」
私はその言葉をく覚えていた。
このは、声をかけないことでを助けるなのだとった。
交際して3。
27歳のに結婚した。
プロポーズもひどいものだった。
駅の歩で突然ち止まり、
「戸籍って緒にできるだろ」
と言った。
「何それ」
「いや。だから……緒にしたい」
私は笑ったあと、泣いた。
悠馬は困った顔をして「がいな」と関係のないことを言った。
結婚、《実り》で私は度だけ自分のを話した。
「いつか、こういうをやりたい」
「?」
「きくなくていいの。カウンターが5席くらいで、窓のところに1で座れる席があって。泣きたいに1で来られる」
言ってから恥ずかしくなった。
「馬鹿みたいだよね」
悠馬はコーヒーをみ干した。
「美らしいだな」
それだけだった。
でも笑わなかった。
私は、それが嬉しかった。
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入籍の翌週、悠馬は半休を取って私を央へ連れてった。
「座、作れ」
「あるよ」
「そっちじゃない。のを貯める座」
私の名で普通預座を作り、最初に5万円を入れた。
暗証番号を決める、悠馬は言った。
「番忘れないでいいだろ」
私が入力した数字が、0427だった。
通帳とカードは悠馬が受け取った。
「私の座なのに」
「使うな。貯める座だ」
私は笑った。
その、私はその座のを忘れていった。
忘れられるほど、当たりに2の活が続くとっていたのだ。
結婚して5目の、悠馬の父・源次さんが町を畳んだ。
きな取引先を失い、体調も悪くなっていた。械や設備を売っても借が残り、その返済を悠馬が引き受けることになった。
私は額をらされなかった。
「私も働くよ」
そう言った。
「いい」
「良くないでしょう」
「親父の借だ。俺の問題だ」
「夫婦でしょう」
「うちの活とは別にする」
悠馬はそれ以話さなかった。
活費は以と同じだけ私へ渡した。
だからこそ、私はだった。
どこを削って返済しているのか分からない。
悠馬はその頃から昼を持参するようになった。
私が作る弁当ではない。
朝、自分で塩むすびを2つ握り、聞で包んで鞄へ入れた。
「作るよ」
「いい」
「毎それじゃ体壊すよ」
「昼だけだ」
きなで作るから、1つ1つが妙にきかった。
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父親がくなったのは、を畳んで2だった。
葬儀には悠馬の兄・亮介さんも来た。
亮介さんは悠馬とは正反対で、よく喋るだった。保険代理に勤め、誰かと会えばすぐ名刺をす。
葬儀の夜、酒をんだ亮介さんが悠馬へ言った。
「親父のなんか、俺は最初から畳めって言ってたんだ。おが途半端に入れるからこじれたんだろ」
私は腹がった。
言い返そうとした、悠馬が机のでそっと私の膝を押さえた。
帰り、私はった。
「言い返せばいいのに」
「言い返してどうなる」
「悔しくないの?」
悠馬はし黙った。
「兄貴は兄貴で、昔、親父にを借りてた期がある」
「だからって」
「言えない側の言い方ってのがあるんだ」
私は黙った。
悠馬は、自分の内の悪を言わない男だった。
その頃から、私は喫茶のをにしなくなった。
父親の借を抱える夫の横で「自分のが欲しい」と言うのが申し訳なくなった。
業にはがいる。
にすれば、悠馬はきっと何とかしようとする。
それが分かっていたから言えなかった。
悠馬は々聞いた。
「あの話、どうなった?」
「あの話って?」
「」
私は笑った。
「もう齢にも無理だよ。今の活で分幸せだから」
半分は本当だった。
悠馬は「そうか」とだけ答えた。
私は、彼ももう興を失ったのだとっていた。
婚の、悠馬が1で押入れを理したがあった。
朝から箱をしては戻し、私が伝おうとすると「いい」と断った。