"合格発表の日、父は消えた" 第1話
200338、埼玉県川越では、朝から細かながっていた。
午10をし過ぎたころ、19歳の佐伯千は予備の掲示板のにち、自分の受験番号を何度も確かめていた。第志望だった京部学社会学部の格者覧に、確かに《4172》という数字があった。
現役のときには格だった。
母の恵美子は千が学2のときに病気でくなり、それからは父の正雄と2で暮らしてきた。正雄は元の川越央タクシーに勤める運転で、娘を予備へ通わせるため、1から夜勤を増やしていた。
「もう1だけ挑戦したい」
現役受験に失敗した夜、千がそう頼むと、正雄はしも迷わなかった。
「1でりなければ、もう1やればいい。父さんのことは気にするな」
学の学費について尋ねても、同じ答えだった。
「のことは、格してから考えればいい。受けるから諦める理由にするな」
その言葉に支えられ、千は1勉を続けた。
格を確認した彼女は、予備の公衆話から父の会社へ話をかけた。しかし正雄は仕事で、事務員が話にた。
「父に伝えてください。受かったよ、今夜は緒にご飯をべようって」
話を切ったあと、千は父の反応を像した。
正雄はを表にすではなかった。声でぶより、帰宅途にスーパーへ寄り、しい刺かケーキを買ってくるような父親だった。
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午52分、正雄は無線へ「本の勤務を終する」と連絡した。
最の乗客を川越駅でろしたあと、庫へ戻る予定だった。しかし正雄が運転する27号は、午6を過ぎても戻らなかった。
会社から自宅へ話がかかってきたのは午720分だった。
「お父さんから連絡はありませんか」
千は、格祝いをするためどこかへ買い物にっているのだとった。卓には炊きたてのご飯と、父の好物である鯖のみそ煮を用していた。
ところが午10を過ぎても、正雄は帰らなかった。
夜0、27号が荒川くの古い資材倉庫ので発見された。通りかかったトラック運転が、会社名の入ったがまっていることを審にい、警察へ通報したのだ。
エンジンは止まり、運転席のドアには鍵がかかっていなかった。
正雄の財布、運転免許証、腕計は内に残されていた。部座席には黄いチューリップの束が落ち、何本かはシートので折れていた。
助席には千の学の格通が置かれていた。
正雄の姿はどこにもなかった。
載の料メーターには、そのの営業記録が残っていた。最の乗は午518分に始まり、午86分に終している。
距は約43キロ。
それほどくっているにもかかわらず、運賃は0円だった。
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翌朝、倉庫から約2キロれた川敷で、正雄の革靴がそろえて置かれているのが見つかった。のには川へ向かう跡が残されていたが、によって途から判別できなくなっていた。
警察は川を捜索した。
しかし正雄は見つからなかった。
会社の個ロッカーからは、学の退学届の用と、正雄の字でかれたメモが発見された。
《千には、学を諦めてもらうしかない》
警察は、娘の格をびながらも、入学や学費を用できなかった正雄が追い詰められた能性を考えた。
正雄には消費者融と会社からの借り入れがあり、その総額は700万円を超えていた。自宅の宅ローンも残っており、預はほとんどなかった。
千は、その事実を初めてった。
父は「の配はするな」と言いながら、限界まで借を増やしていた。
警察官からメモを見せられたとき、千は文字を読むことができなかった。目ののに焦点がわず、正雄の声だけがので何度も繰り返された。
のことは格してから考えればいい。
受けるから諦めるな。
それなのに父は、千が格したそのに消えた。
捜索は数か続いたが、がかりは見つからなかった。正雄は自ら川へ入ったのではないか、借から逃げたのではないか、別ので暮らしているのではないかと、さまざまな噂が流れた。
千は学への入学を辞退した。