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"4500万の城を奪われた夜" 第15話

その顔には、先ほどまでの威勢はなく、追い詰められた獣のような焦燥が張り付いていた。

「どうなってんだよ! 兄貴は『葵のマンションは自由に使わせる、担保にして面してやるからしろ』って言ったから、俺たちは群馬のを捨てててきたんだぞ! 話が全然違うじゃねえか!」

「敏男、落ち着け!」

「落ち着いていられるかよ! こっちはにもサラが群馬のに差し押さえの札を貼りに来るんだぞ! 京のこの部も追いされたら、俺たちはどこへきゃいいんだよ!」

「お兄ちゃん、嘘だったの!?」 悦子も宗助に詰め寄った。 「葵ちゃんに話を通してあるって言ったじゃない! 『葵は俺の言うことなら何でも聞く、あいつの稼ぎは全部のものだ』って、あんた見栄切ってたじゃないの!」

「黙れ! おたちまで騒ぐな!」 宗助はに詰め寄られ、狼狽しながら鳴り返した。

その無様で醜悪な景を、葵はただめた目で見つめていた。 これが、父が命懸けで守ろうとしていた「族の絆」の正体だった。 尊敬でも、でもない。 「都よくを引っ張れる内」を頼り、見栄と嘘で塗り固められた寄虫たちの共い。

奥でずっと黙ってスマホを見ていた栞が、乱暴に自分の通学カバンを肩に掛けた。 「……もういい。最悪。恥ずかしい」

「栞!?」悦子が振り返る。 「こんなの聞いてないし。

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学受験とかどうでもいい。私、友達のところに泊まるから」 栞は葵たちを瞥もしないまま、玄関に散らばる自分のスニーカーにを突っ込み、ドアを押しけて逃げるように廊っていった。

「栞! ちょっと、栞!」 悦子が叫んだが、音は非常階段の向こうへと消えていった。

残された部に、耐え難い沈黙が落ちた。

佐伯が計を見やり、事務な声でいた。 「管理会社としても、これ以の居者への迷惑為を見過ごすことはできません。本、午までに完全に退されない、警察への通報および、共用廊の荷物の斉撤処分をいます。処分費用はすべて請求いたします」

警備員が無言で腕を組み、宗助たちの逃げを塞ぐようにった。

敏男が持っていたビールの空き缶をに叩きつけた。 カシャリ、と鈍い音がリビングに響く。 「クソが……! やってられっか! 悦子、荷物まとめるぞ! こんな狭っ苦しい部、こっちから願いげだ!」

「で、でも敏男さん、今夜泊まるところは――」 「があるだろうが! くの健康ランドにでもくぞ!」

敏男は乱暴に自分の着替えを掴み、廊のダンボールを引きずり始めた。 悦子も青ざめた顔で、葵のベッドルームから自分たちの私物をかき集めてカバンに詰め込み始めた。

はもう、葵の顔を見ようともしなかった。

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先として利用価値がないと分かった瞬、罵倒する気力すら失い、ただ保のために逃げすことしかにないようだった。

のダンボールが、つ、またつとエレベーターへ運びされていく。 台を持ってきた佐伯と警備員が、無言でその作業を監していた。

玄関に残された宗助は、ち尽くしたまま、拳を震わせていた。 妹夫婦からも見限られ、娘からは法な包囲網を敷かれ、彼の誇ってきた「男」としての権威は、完全に々に砕け散っていた。

「……葵」 宗助が絞りすような声で言った。 その声には、先ほどまでの声の面はなく、惨めな懇願のが混ざっていた。

「私は……おの父親だぞ。おに育てげたのは誰だとっているんだ。こんな真似をして、親の恩を仇で返して……お悔しないのか」

葵は父のった。 子供の頃、見げるほどきく、恐ろしかった父親の背は、いつのにかさく丸まり、ただの老に成り果てていた。

「恩なら、もう分に返しました」 葵の声は、どこまでも平坦だった。

を卒業してからの学費も、活費も、私はすべて自分で払いました。就職してからも、お父さんの見栄のために、親戚の冠婚葬祭の費用を何度もて替えさせられましたね。全部、記録に残っています」

葵はバッグから、通の封筒を取りした。

には、実鍵と、以父から渡されていた実の郵便受けの鍵が入っていた。

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