"4500万の城を奪われた夜" 第12話
「あぁ!? なんだてめえら! 昼っからのので騒ぎやがって!」
「のではありません。私のです」 葵は歩も引かず、敏男の目をまっすぐに見据えた。 「叔父さん、群馬のが競売にかけられていることは調べがつきました。借取りから逃げるために、私の部を乗っ取るつもりだったんでしょう」
敏男の顔が、驚愕と羞恥でどす黒く染まった。 「て、てめえ……誰に聞いた!」
「レジ袋に捨ててあった差押予告通を見ました。健司さんの借の千百万円、叔父さんが連帯保証ですね。父は、私のマンションを担保にして百万円借をね、それを返済に充てようとしていました。私の机の鍵を抉じけて実印を盗もうとしたのも、それが目ですね」
「ぐっ……!」 敏男は言葉に詰まり、喉を鳴らした。
廊に異様な沈黙が落ちた。 佐伯が眉をひそめて敏男から半歩距を取り、悦子は青ざめて唇を震わせている。
「内の恥を……のでペラペラ喋りやがって!」 敏男が逆し、葵に向かってを振りげた。 「この恩らずの娘が!」
「をしたら、その瞬に警察を呼びます」 麻里が鋭く割り込み、元のスマートフォンを敏男の顔に向けた。 「すでに通話状態で110番に繋がっています。暴の現犯で逮捕されますよ。元公務員の宗助さんの弟さんが、傷害で科持ちになりたいのですか?」
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敏男の腕が、空でピタリと止まった。 「宗助」という兄の名をされたことで、わずかに理性が引き戻されたようだった。
「葵ちゃん……あんた、本気なの?」 悦子が取り繕うように、猫なで声をし始めた。 「私たち、本当にくところがないのよ。健司の会社が倒産して、怖いたちがに来るようになって……栞の受験だって、本当はおがないから京の学に特待で入るしかないのよ。内でしょう? 助けてくれてもいいじゃないの」
「助ける?」 葵はややかに笑った。 「私を納戸に追いやり、タバコを吸い、実印を盗もうとし、役所に勝に転入届をそうとしたたちが、助けを求める態度ですか? 私には私のがあります。あなたたちの無計画な借の犠牲になる筋いは、ミリもありません」
「です」 麻里が計を確認しながら、事務なトーンで告げた。 「の午までに、荷物をまとめて鍵を引き渡してください。それ以は、裁判所に占移転禁止の仮処分を申して、執官ち会いのもとで制退続きに入ります。その際にかかる数万円の執費用も、すべてあなた方に求償します」
葵たちは踵を返し、エレベーターへ向かった。 背で悦子の「ちょっと待ちちなさいよ! お兄ちゃんに言いつけてやるから!」という切り声と、敏男の激しい舌打ちが響いたが、誰として振り返らなかった。
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エレベーターをり、エントランスをたところで、葵はく息を吐きした。 膝が微かに震えていた。だが、胸の奥には議なほどの静寂が広がっていた。 度踏みしてしまえば、あれほど恐ろしかった親戚の声も、ただの無力な吠えに過ぎないことが分かったからだ。
「来よ、葵」 麻里が肩をポンと叩いた。 「相は完全に揺してる。でも、ここからが番厄介よ。あののは、追い詰められると必ず『番都のいいろ盾』を引っ張りしてくる」
「父、ですね」
「ええ。着信拒否されていると分かれば、群馬から直接乗り込んでくる能性がいわ。自分の妹夫婦が追いされそうになって、自分の面子を潰されたとなったら、あののプライドの塊みたいな父親は違いなく京に来る」
麻里の予測は、恐ろしいほどの正確さでした。
翌の夕方。 葵が会社のデスクで残務処理をしていた午過ぎ、葵の社用スマホ――会社支の連絡用携帯に、見らぬ番号から着信が入った。 業務用の回線であるため、ないわけにはいかない。
「はい、野です」
『……葵か』
く、苦しい声。 紛れもなく、父・宗助の声だった。実の固定話でも個の携帯でもない。公衆話か、誰かの携帯を借りてかけてきているらしかった。
葵の指先がたくなったが、声のトーンは崩さなかった。