"4500万の城を奪われた夜" 第6話
葵は胸の奥で湧きがる吐き気をみ込み、仕事用のデスクに向かった。 アダプターをカバンに入れ、クローゼットから着替えのスーツを着取りす。
そのとき、デスクの側にある引きしの鍵穴が目に留まった。 葵が賃貸契約類や印鑑、通帳を保管している型の引きしだ。真鍮製の鍵穴の周囲に、マイナスドライバーか何かで無理やり抉じけようとしたような、真しい引っかき傷が数箇所ついていた。
葵の背筋をたいものがった。 鍵自体は葵が持ち歩いているためいてはいなかったが、らかに誰かがを取りそうとした痕跡だった。
(何を血迷ってるの……?)
葵は静かに引きしに背を向け、部をた。 廊の途に置かれた、悦子たちの荷物のに目をやる。 その脇に、指定の料ゴミ袋ではない、所のスーパーのレジ袋がつ、を縛って放置されていた。
葵は屈み込み、ゴミ袋の側からを透かして見た。 コンビニ弁当の空き殻やティッシュに混ざって、と赤の派な文字が印刷された圧着ハガキが破り捨てられているのが見えた。
葵は背のリビングを警戒しながら、レジ袋の結び目を指先で解いた。 破片をつ、素く取りし、スマートフォンのカメラで撮する。
そこに印字されていた文字は、葵の予を遥かに超えていた。
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『差押予告通』 『債務者:野敏男/連帯保証:野健司』 『指定期までにお支払いが確認できない、対象産(群馬県〇〇……)の競売続きを始いたします』 差は、方の信用庫と、債権回収を専とするサービサー会社だった。
付は先の。 額の欄には、遅延損害を含めて「千百万円」と記載されていた。
葵のので、バラバラだったピースが気に音をてて繋がった。 敏男の運送業がちかなくなっていたのは聞いていた。だが、すでに実のと建物は差し押さえの最終段階に入っていたのだ。 そして、連帯保証になっている男の健司。 健司は元で古の転売や怪しい投資話にをしていると、以母がきている頃に噂で聞いたことがあった。
あの連は、京に遊びに来たのではない。 差し押さえと借取りから逃れるために、文字通り夜逃げをしてきたのだ。 そして、その逃避先として選ばれたのが、暮らしで従順だとわれていた葵のマンションだった。
「ちょっと葵ちゃん、何ごそごそしてるの?」
背から鋭い声がんできた。 振り返ると、悦子が腕を組んで廊にっていた。その線は、葵の元に向けられている。
葵は撮を終えたスマホをポケットに滑り込ませ、何事もなかったかのようにちがった。
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「ゴミの分別がされていなかったので。このマンション、燃えるゴミのにプラスチックを混ぜると回収してもらえないんです」
悦子はわずかに眉をねげたが、すぐに元の敵な笑みに戻った。 「あらいけない。田舎と違って京は細かいのね。でやっておくわよ」 そう言いながら、悦子は葵に歩づいてきた。
「それより葵ちゃん、ちょっと事な相談があるんだけど」
「仕事に戻らなきゃいけないので、にお願いします」
「あのね、あんたの部の机。側の引きし、鍵がかかってるでしょ? あれ、スペアキーどこにあるのかしら」
堂々とした物言いに、葵は喉の奥が乾くのを覚えた。 「どうして私の引きしをける必があるんですか」
「実印よ、実印」 悦子は葵の顔を伺うこともなく、まるで砂糖の壺の所を尋ねるような軽さで言った。 「ほら、栞が京の予備に通うことになったり、いろいろ続きがあるじゃない。それに敏男さんの健康保険の続きもあるし。お兄ちゃん――あんたのお父さんから聞いたのよ。葵の実印と印鑑カードはあの机に入ってるはずだから、必な類にちょっと判を押すくらい、融通してやってくれってね」
父が。 実の父親が、に自分の娘の実印の保管所を教え、使わせようとした。
りを通り越して、脳の奥が真っになるような覚だった。
実印と印鑑登録カード、それに産の権利関係類があれば、勝に委任状を作成して何をされるか分かったものではない。