"消された合格通知" 第6話
理から値げを提案されたは反発したが、原価表を見ると円げなければ作るほど赤字だった。客に事をく説し、週に価格を改定した。数は買わなくなったが、無理な価格で皆の労働をくするより誠実だと判断した。
その言葉で、直は急いで父を追い越そうとしていた自分に気づいた。成功しなければをたがない。テレビになければ弟に負けたまま。そんな考え方も、父の物差しだった。
直は夜の品と舗管理の講座へ通い始めた。学費は自分で払い、宿題のために週は残業を断った。歳でけなかった学の代わりではない。歳の自分に必な学びを、自分で選んだ。
、母が《舟》へ来た。客の列の最に並び、柚子噌パンをつ買った。直は厨から見ていたが、声をかけなかった。
閉、のに子がっていた。
「おいしかった」
「ありがとう」
「お父さんには言ってない。るから」
直はため息をついた。「また隠すのか」
子ははっとした顔をした。
「喧嘩を増やしたくなくて」
「母さんはいつも、喧嘩が起きない方を選ぶ。そのために、誰かが黙ることになっても」
子はすぐ謝らなかった。袋を握り、しばらく考えてから言った。
「そうね。私は族を守ったんじゃなくて、自分が責められない所にいただけかもしれない」
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初めて聞く言葉だった。それでも直は、その言でを帳消しにはできなかった。
「父さんに今来たと話せとは言わない。母さんが決めて。ただし、俺を秘密に使わないで」
子は頷いた。
翌週、子からいが届いた。歳の直へ格を伝えられなかったのことが、言い訳を交えずにかれていた。
あの、昭はの借入返済表を卓へ広げ、「直がけばは終わる」と言った。子はがなくなれば族全員がに迷うとい、辞退届を郵便局へ持っていった。窓で切を買った、度だけ封筒を返してもらおうとした。しかしろにが並び、迷惑をかけるのが怖くて、そのまま差ししたという。
《私はきな悪事を決したのではなく、さく波を避け続けました。その積みねが、あなたのになりました》
直は、その文を何度も読んだ。母が父に脅されたという説だけなら、受け入れられなかっただろう。怖かった自分のさまで母が認めたことで、初めて話の続きを聞ける気がした。
それでも返事には、《読みました。今すぐ許せるとは言えません》とだけいた。子からは《それでいいです》と返ってきた。
、昭から話があった。
「母さんをそそのかしたな。の帳簿を見せろと言いした」
直は驚いた。
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母は以レジを守りながら、売も借入残も父から詳しくらされていなかった。
「俺は何も言ってない」
「おがを乱してから、全員が権利ばかり言う」
「父さん以のが見を言うになっただけじゃないか」
の終わり、拓が《舟》の閉に訪ねてきた。以の華やかなコックコートではなく、汗染みのあるTシャツ姿だった。
「兄さん、これを返す」
差ししたのは実の予備鍵だった。
「俺の鍵じゃない」
「父さんから、兄さんの部のレシピ帳を探せと言われた。しい餡の配があるはずだって」
拓は断り、鍵を返そうとして父と論になったという。
「今さら正しい弟になるつもりか」
「違う。俺も困ったからだ」
拓はの現状を話した。父はテレビ放送に価な包装をリースし、売が落ちても契約を見直さなかった。取引先への支払いを部遅らせ、母名義の定期預を解約しようとしている。
「兄さんに戻ってもらえば売が戻ると、本気でってる。俺が作れないから悪いとも言われた」
直は弟をかわいそうだとったが、助けるとは言わなかった。拓もまた、兄の名を消して利益を受けただった。
「を続けたいなら、数字を全部して、父さん抜きでも話しえ。俺を連れ戻す計画から始めるな」
「父さんが帳簿を見せない」
「母さんは見せろと言ったんだろ。で税理士に相談すればいい」
拓は苛った。