"消された合格通知" 第3話
どこまで自分のものと言えるのか、だけでは決められなかった。
の無料法律相談で、弁護士は慎に言った。
「料理のレシピそのものは、般に著作権で守りにくいです。ただし、写真や文章、ノートの表現は別です。営業秘密として管理されていたか、雇用関係で誰が発したかも関係します」
直は落胆したが、弁護士は続けた。
「勝てると言うための相談ではありません。何を取り戻したいかを理するための相談です。商品を売るなと言いたいのか、発者として表示してほしいのか、未払い賃を請求したいのか。それぞれ別の話です」
直が確実に示せたのは、過分の勤務記録だった。午半に勤しても与細の労働は毎。タイムカードは父が「族に必ない」と撤していたが、直はオーブンの稼働記録と仕入れ業者への朝メールを保していた。
労働相談窓では、族経営でも働き方の実態によって労働者性が判断されると説された。すぐにが戻るわけではない。それでも、直は初めて父の言葉以の基準で自分のを見た。
引き継ぎ最終、昭はをした。
《退職、でり得た製法を使用せず、同業種で働かない》
「署名すれば、今分の料を払う」
直はを写真に撮り、そのでは受け取らなかった。
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「料は条件と交換するものじゃない」
「恩らずが、法律だけは覚えてきたか」
「法律をらなかったから、族の言葉を信じていたんだ」
その夕方、直が最のを蔵庫へ入れていると、の美が倉庫から古いファイルを持ってきた。
「この発注、処分していいですか。からよりは捨てろと言われました」
ファイルには材料の納品や保健所の検査控えが挟まっていた。そのに、見覚えのある写真があった。歳の直が受験会で作った、噌と胡桃のパンだった。
裏には専学の印と、《特待作品使用許諾》という文字がある。学が広報冊子に作品写真を載せるため、本の同を求めた類だった。
署名欄には、直の名がかれていた。
だが、それは直の字ではなかった。
さらにの備考欄には、父の跡でこう記されていた。
《本は学を辞退するが、本作品の製法は当が継承する》
直が父を見ると、昭は類ではなく、母の顔を見た。
子は唇を押さえたまま言った。
「それをいたのは、お父さんじゃない」
「じゃあ、誰だ」
母は目を閉じた。
「私よ」
直はそので類を奪い取りそうになった。だが美がいるで族の鳴りいを続ければ、若い従業員にしい沈黙をいることになる。
「今はここまでにする。
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類は捨てないで。、の顧問税理士にもを伝える」
昭は「のだ」と拒んだが、拓が初めて父を止めた。「今捨てたら、本当に隠したことになる」と言った。
直はをた。真実が枚ので完成したとはわなかった。母が署名した理由、学が確認しなかった経緯、父がどこまで指示したのか。それぞれ別に確かめる必があった。ただつ確かなのは、自分が落ちたのではなかったことだった。
子は、受験作品の写真を学から送ってもらっていた。学を諦めさせた償いに、せめて息子のパンをの商品にしたいとったという。
「あなたのが残れば、無駄にはならないとった」
「俺の名を真似て署名したのか」
「学へ返事が必だった。お父さんは捨てろと言ったけれど、私は……」
「残したんじゃない。勝に使える形へ変えたんだ」
子は反論できなかった。母のしたことは父より柔らかい言葉で包まれていたが、選択を奪った点では同じだった。
直は類を持ち帰らず、そので両面を撮し、美にも発見の状況をメモしてもらった。古い枚を万能の証拠にはしたくなかった。翌、学へ連絡すると、当の原本は保期を過ぎていたが、広報誌と作品審査表のデータは残っていた。
担当者は謝罪しながら説した。
「未成ではなく歳でしたから、本来はご本へ確認すべきでした。ご族から辞退届と許諾が届き、担任の先からの照会にも、ご本のだと回答があったため処理してしまいました」