"父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導" 第22話
郎社はい理のに額をく押し当て、全を震わせて座を続けている。
その横で志は完全に魂が抜けたような顔をして、呆然と宙を見つめていた。
「希様……いや、オーナー様!どうか、どうかご慈を!」
郎社の痛な声が、静まり返った部に響き渡る。
「彼個の横領については、会社として全額弁済いたします!」
郎社は必に声を振り絞った。
「ですから、来期の契約更だけは……!」
彼は自社の命運がかかっている契約を繋ぎ止めようと、必に懇願してきた。
しかし、私のに同の余は切なかった。
私はテーブルに置いた黒いファイルから、1枚の々しい面を取りした。
「郎社、顔をげてください」
私がたく言うと、郎社はおずおずと顔をげ、私の元の面を見た。
「当グループは、あなたの会社との基本取引契約を、本をもって全て即破棄します」
私は面を読みげた。
「契約第18条に定める、な背信為と正取引に該当するためです」
私の宣告がされた瞬、郎社の顔から最の希望が消え失せた。
私は面を、彼らの目のに滑らせた。
「さらに、これまでの正な取引によって当グループが被った損害と、契約の違約を直ちに請求します」
私は志の顔を見据え、はっきりと告げた。
広告
「総額は、50億円となります」
その数字を聞いた瞬、郎社は過呼吸のように喉を鳴らし、両でを抱え込んだ。
「50億円……」
郎社は絶望な声をした。
「そ、そんな額、うちの会社を全て売り払っても払えない……。倒産だ。が社はもう完全に終わりだ……!」
彼はに突っ伏し、子供のように声をげて泣き崩れた。
堅の通信設備会社にとって、50億円という額は、即座にをする絶望な数字だった。
志は、その数字のきさにようやくに返り、顔面を蒼にして首を横に振った。
「み、希……!待ってくれ、50億なんていくら何でも無茶苦茶だ!」
志は膝ちになり、私に向かってを伸ばした。
「俺たちは元夫婦じゃないか!し話しえば、こんなことには……!」
彼がまたしても『夫婦』という言葉を使ってすがりつこうとした、郎社が猛然とちがった。
「黙れ!この期に及んでまだオーナーに馴れ馴れしいを利く気か!」
郎社は発狂したように叫び、志の頬を力任せに殴りつけた。
乾いた音が響き、志は無様な声をげてに転がった。
「おのせいでが社は倒産だ!社員もその族も、全員がに迷うんだぞ!」
郎社は志を見ろし、酷に宣言した。
「おは本付けで懲戒解雇だ!娘のリナとの結婚も当然だ!」
郎社の激しい宣告に、志は殴られた頬を押さえながら、信じられないという顔をした。
広告
「社……嘘ですよね?私がいなければ、会社の営業は……」
「もう会社自体がなくなるんだよ!」
郎社は志を鳴りつけた。
「おが、50億円の違約の全責任を負うんだ!」
郎社はそう吐き捨てると、田部に向かって々とをげた。
田部が徹な声で応じた。
「違約については、こいつの個の横領が原因であることを法に証し、責任を追及します」
郎社は志を睨みつけた。
「が社は破産続きに入りますが、こいつには莫な借として背負わせます」
志の誇っていたエリートが、完全に音をてて崩れった瞬だった。
次期社の座も、社令嬢との結婚も、彼が必に虚勢を張って守ってきたものは、全て泡と消えた。
残されたのは、彼がかかっても返しきれない50億円という絶望な負債だけだ。
「い、嫌だ……!自己破産なんて嫌だ!助けてくれ、希!」
志はをい、私の元にすがりつこうとを伸ばしてきた。
「俺が悪かった!を入れ替えておのために働くから!だから違約だけは……!」
涙とにまみれた顔で命乞いをするその姿は、私がを追いされたの彼の酷さとは、まるで別のようだった。
しかし、私の目には彼がただのれな寄虫にしか見えなかった。
「私にはもう、あなたというは見えていません」
私は極温の声でそう言い放ち、彼から完全に顔を背けた。