"父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導" 第18話
数秒、マジックミラーの向こう側で応接の奥の扉が音もなくいた。
仕ての良いグレーのスーツを着た京子さんが、洗練された取りで部のへ入っていく。
彼女が姿を現した瞬、部の空気が変した。
志と郎社は、彼女が放つただならぬ威厳に圧倒されたのか、慌ててソファーからちがった。
「あ、暁グループのCEO、京子様ですね」
郎社が緊張で声を震わせながら、くをげた。
志もそれに続き、先ほどまでの傲な態度はどこへやら、見事なほどの笑いを顔に貼り付けた。
「お招きいただき栄です。営業部の志と申します」
彼は揉みをするようにして歩にると、スーツの内ポケットから名刺入れを取りした。
「が社の技術力と私の営業力は、必ずや貴グループの発展に貢献できると確信しております。本は何卒よろしくお願いいたします」
志が名刺を両で差しし、さらにくをげる。
自分を偉だと勘違いし、頂になっている彼の姿は、あまりにも滑稽だった。
京子さんはその名刺を受け取ろうとはせず、ただややかな目で2を見ろしている。
私はモニタールームの扉に歩み寄り、たい属のドアノブにをかけた。
彼らがい描いていた輝かしい未来は、ここから先の数分で完全に終わる。
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父が残したあのブリキ箱が、彼らにとってのパンドラの箱としてかれるのだ。
私は極温にえ切ったを抱え、陣の図を静かに待っていた。
応接の空気は、ピンと張り詰めていた。
志は両で名刺を差ししたまま、卑屈な笑みを浮かべて固まっている。
しかし、京子さんは彼のにる名刺を受け取ろうとはしなかった。
彼女のややかな線に射抜かれ、志の顔に浮かんでいた笑みが微かに引きつる。
「あ、あの、京子様……。どうかされましたでしょうか?」
志が媚びるような声で尋ねると、京子さんは静かにをいた。
「ご挨拶は私ではなく、こちらのオーナーにお願いします」
彼女の透き通るような声が、広い応接に響き渡った。
志と郎社は、その言葉のが理解できず、キョトンとした顔を見わせた。
京子さんがうやうやしく歩がり、奥の扉へと続くをける。
その瞬、私が待していたモニタールームと応接を繋ぐな扉が、音もなくかれた。
私は脇に黒いファイルを抱え、ゆっくりと応接へを踏み入れた。
私のろからは、田部をはじめとする数の役員たちが、糸乱れぬ取りで続いている。
私は彼らを引き連れたまま、部の央でち尽くす2の男へ向かって歩みをめた。
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私の音が、理のにたく響く。
志の線が、私を捉えた。
その瞬、彼の顔面から全ての血の気が引いていくのがはっきりと分かった。
見かれた両目は限界まで見き、差しした両がぶらりと力なくがる。
「えっ……」
志のから、の抜けた声が漏れた。
彼が見ているのは、ヨレヨレの喪を着て涙を流しながら追いされた元妻ではない。
最級の濃紺のオーダースーツにを包み、数の幹部を従えて歩く女の姿だ。
彼のっぺらい脳は、目のの景を処理しきれていないようだった。
「み、希……?お、なぜこんなところにいるんだ……?」
志は数歩ずさりし、混乱したで必に自分の都の良い解釈を探り始めた。
「まさか俺をストーカーして、ここまで来たのか!?」
彼は顔を赤くし、鳴った。
「警備員!この女は審者だ!さっさとつまみせ!」
彼が裏返った声で叫んだだった。
「を慎みなさい!」
京子さんの氷のようなが、志の叫び声を完全に叩き潰した。
「彼女は、がグループを統べる絶対な株主です」
京子さんは志を睨みつけた。
「あなたのようなが、気く名を呼んでいい方ではありません」
その宣告が響き渡ると、郎社が発作を起こしたように息を呑んだ。
「ひっ……!株主……?グループのオーナーだと!?」
郎社は震えるで志の肩を掴み、顔面蒼になって問い詰めた。
「志君!君はこのお方をっているのか!?」