"父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導" 第12話
京子さんが急ぎ配してくれた、仕ての良い濃紺のパンツスーツにを包んでいる。
10の結婚活で、私は自分のためにを買うことすら許されていなかった。
専業主婦にしいなど必ないと言われ、いつも物の古着を着回していたのだ。
しかし、昨までのヨレヨレの喪は、過の惨めな私と緒に完全に捨てった。
壁面のな本棚と、黒曜のように黒くる広なデスク。
その央に置かれた革張りの子に腰をろすと、議と背筋が伸び、が静かに落ち着いていた。
「希様、監査部の責任者をお連れしました」
ノックの音と共に、京子さんが1の初老の男性を伴って入してきた。
彼は分いファイルとタブレット端末を抱え、極度に緊張した面持ちで私のにみた。
「監査部の田と申します。ご指示いただいた特定取引先の初期報告をお持ちしました」
田部はうやうやしくをげ、私のデスクにファイルを丁寧に広げた。
そこには、志が勤めている京の堅通信設備会社の、過5分の経営データが並んでいた。
志はでよく、「俺の営業力で会社を回している」「俺がいなければ会社は倒産だ」と豪語していた。
社の娘であるリナさんと再婚し、次期社として業界に君臨するのだと。
広告
私はその威圧な態度に押され、彼が本当に優秀で欠なエリートなのだと信じ込まされていた。
しかし、田部が示した鮮やかな円グラフを見て、私はわず目を疑った。
「この会社の売構成をご覧ください。全体の8割が、当グループの通信事業部からの請け発注です」
田部が赤いマーカーで調された部分を指差した。
「彼らの主な業務は、がグループが敷設した通信ケーブルの保守と点検です。独自の技術を持っているわけではなく、当グループのライセンスがなければ仕事が成しません」
つまり、志の会社は暁グループという巨な傘ので、与えられた作業をこなしているに過ぎない。
「もしグループが、この会社との取引を止したらどうなりますか?」
私が静かに尋ねると、田部は切のを交えない事務な声で即答した。
「来には資繰りが完全にショートし、3ヶ以内に違いなく倒産します」
志が誇っていたエリートとしての位や、会社での絶対な権力。
それは全て、私の父が命懸けで築きげたこのグループからの発注があってこその、っぺらいだったのだ。
「希様、もう1つ急ぎご報告すべき審な点があります」
田部が別のページをき、細かな数字がびっしりと並んだ表を提示した。
広告
「過3の、この会社からの請求と実際の事現の納品記録を照しました」
彼は厳しい顔つきで報告を続けた。
「すると、部材費や注費の項目に自然な利益率の変が見られます」
私はを乗りし、その表の数字をじっと見つめた。
「過3と言うと、ちょうど彼が営業部に昇し、実権を握り始めた期となりますね」
「はい。は非常に巧妙に隠蔽されていますが、当グループの監査システムを通せば目瞭然でした」
田部はタブレット端末を操作し、いくつかの領収の画像や複雑な送ルートの図を表示した。
「彼らは現の作業を、さらに孫請けのさな業者へ丸投げしています」
田部は画像を指で拡した。
「その際、請けに対して当な値げ圧力をかけ、正規の予算との差額を浮かせているのです」
そして、決定な事実をにした。
「浮いた資は、架空のコンサルタント料としてダミー会社へ毎送されていました」
単なる経費の増しではない。
のいさな業者を脅して搾取し、自分の懐に入れるという悪質な横領為だ。
胸の奥で、静かな炎が燃えがるのをじた。
私の父も、さな町で毎油にまみれながら必に働いていた。
いの職たちを脅し、自分の私腹を肥やすようなやり方を、私は絶対に許すことができない。
志は私を寄虫だと罵り、1円の活費すらし渋って私を精神に追い詰めていた。