"父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導" 第4話
私に残されたは、父の言葉を信じてこの所へ向かうことだけだった。
翌朝、私はいにホテルのフロントへ向かった。
カウンターに鍵を置き、チェックアウトの続きを済ませる。
へると、たい朝の空気が頬を撫でた。
私は駅へと歩き、券売のにった。
画面を操作し、へ向かう幹線の切符を買う。
財布のを確認すると、残りの所持は1万円を切ってしまっていた。
それでも、切符を握りしめる私のには、昨夜のような震えはなかった。
ホームにがり、到着した幹線の窓側の席に座る。
私は窓ガラスに顔を向け、流れていく京の景を静かに見つめた。
この10、私は常に志の顔を伺い、彼に否定されないことだけを考えてきてきた。
『俺がわせてやっている寄虫』
その言葉を浴びせられるたびに、自分には何の価値もないのだとい込まされていた。
しかし、こうして彼のの届かない所へ向かっている今、私のは議と穏やかだった。
胸の奥にあった苦しいが、しだけ軽くなったような気がした。
志に捨てられたことで、私は皮肉にも彼から解放されたのだ。
幹線はへ向かってり続け、やがて窓の景はいビルから広な田園景へと変わっていった。
およそ3、私は目の最寄り駅のホームにりった。
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たいが頬を打ち、京とはらかに違う澄んだ空気が肺を満たす。
私は駅のタクシー乗りへ向かい、待していた1台のに乗り込んだ。
配の運転がバックミラー越しによく尋ねてくる。
「お客さん、どちらまで?」
私は父のメモを差しし、そこにかれた所をゆっくりと読みげた。
運転はそれを聞いた瞬、怪訝な顔をして振り返った。
「えっ、お客さん。本当にそこへくんですか?」
私は運転の目を見つめ返し、静かに聞き返した。
「はい。何か違っていますか?」
運転はし言いにくそうにを掻いた。
「いや、違ってはないんですがね。あそこは般のがくような所じゃないんですよ」
私は議にい、さらに質問をねた。
「般のではないと言うと、きなか何かがあるんですか?」
運転はを向き、エンジンをかけながら曖昧に答えた。
「まあ、そんなところです。とにかくってみれば分かりますよ」
運転はそれ以詳しいことを言わず、をらせた。
タクシーはを抜け、徐々に緑のいへと入っていく。
は綺麗に舗装されており、型のトラックが頻繁にすれ違う。
こんな奥に、どれほどきな施設があるというのだろうか。
私は膝のに置いたブリキ箱を、両でしっかりと抱え直した。
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やがてタクシーが緩やかなカーブを曲がり、減速した。
運転がバックミラー越しに私を見た。
「お客さん、着きましたよ。ここがその所です」
が止まり、私は窓のを見た。
その瞬、私は自分の目を疑い、わず息を呑んだ。
目のに現れたのは、古びた民などではなかった。
肌を切り崩して作られた広な敷を、い壁のような分い塀がぐるりと囲んでいる。
正面には、まるで塞のような厳なセキュリティゲートがそびえっていた。
ゲートの向こう側には、美術館のように洗練された巨なガラス張りのビルが見える。
敷内には制を着た警備員が何もち、鋭い線を巡らせている。
入りする黒塗りの級を、彼らが厳格に確認していた。
私は驚きのあまり、声をしたまま座席で直してしまった。
「ええっ……」
ここが、父の指定した所だというのか。
町で油まみれになっていた父と、目のの圧倒な景がどうしても結びつかない。
運転が部座席を振り返り、声をかけた。
「それじゃ、ここでいいですかね?」
運転の声にはっとに帰り、私は慌てて財布から1000円札を取りした。
「はい、ありがとうございます」
お釣りを受け取るももどかしく、私はタクシーのドアをけてへりた。
がりり、私1が巨なゲートのに取り残される。
私はブリキ箱を抱えたまま、そびえつ壁のような建物をただ見げるしかなかった。