"五千万円の保険金を狙った実母と十三歳の孫のリュック" 第16話
「先に依頼されたのですか?それはそれは」
は黒い革鞄をけた。
「しかし、今私が持ってきたのは、先がどうこうできる問題ではないのですよ。法律に完全に決着がついてしまうものですから」
私は構えた。
「決着……?」
はクリアファイルに入った1枚の類を、私に見せつけるように取りした。
「佐藤さん。実は昨、健さんたちのを改めて理しておりましたところ、寝の引きしの奥からこんなものが見つかりましてね」
が差しした類の束の1番。
そこには、毛のような太い字で『遺言』とかれていた。
私は激しく首を振った。
「遺言……健が遺言を残していたと言うんですか?そんな嘘です。健がこんなものをくはずがありません」
はニヤリと笑った。
「ええ、自証遺言です。おそらく、自分たちのに何かあったのために、にいておられたのでしょうね」
はその文面を指差した。
「『私、佐藤健と妻ゆみに万がのことがあった、3の子供たちの親権及び未成者見の権限を、ゆみの母である田幸子に任する。また、私たちの所する産、建物、預貯及び命保険は全て、子供たちの養育費として田幸子に管理を委ねるものとする』」
付は事故の2か。
そしてそのには、健とゆみの名が署名され、2の実印がしっかりと押されていた。
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私は信じられないいで類を見つめた。
健が子供たちの未来を、あのに汚い幸子に託すはずがない。絶対にあり得ない。
は勝ち誇ったような顔で私をあざ笑った。
「嘘ではありませんよ。ほら、この跡を見てください。くなった健さんの字と全く同じでしょう。紛れもなくご本の実印です」
の言う通りだった。
署名された『佐藤健』という文字の癖は、確かに健のものにそっくりだった。
パッと見ただけでは、誰もが本の字だと信じてしまうだろう。
これがあれば、幸子は堂々と子供たちの親権と全財産を奪うことができる。
はたい声で言い放った。
「どうです?これが裁判所に提されれば、いくらあなたが祖母だと言っても親権を取ることは能です。さあ、しく子供たちと、隠し持っている通帳を私たちに渡していただきましょうか」
普通の寄りなら、弁護士という肩きとこの派な類を見せられれば、絶望して膝をついていたかもしれない。
しかし私は、40というい、女つで健を育ててきた母親なのだ。
あの子が幼稚園でいた初めての母ののから、学のノート、結婚の誓約まで、あの子のく文字を何万回と見てきたのだ。
私はの持つ遺言の署名をじっと見つめ、静かに、しかしはっきりと言い放った。
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「その跡は、違いなく健のものに似せてかれていました」
私は確信を持っていた。
しかし、40あの子を育ててきた私だけは、その文字に隠された決定なミスに瞬で気がついたのだ。
が突きつけた遺言。
その最にかれた『佐藤健』という署名。
見すれば、文字の形は健の自のものだった。
しかし、40あの子の文字を見続けてきた私には、目でその致命なミスが分かった。
健は自分の名である『健』という字をく、最のしんにょうの部分をいつも格好なほどく引きすぎる癖があった。
私が学の頃から何度注しても、「これが俺のサインだから」と笑って直さなかった独特のき癖だ。
しかし、この類にかれた署名のしんにょうは、まるで習字のお本のように綺麗に、くピタリと止められていたのだ。
さらに、押されている実印の角度だ。
健は印鑑を押す、無識のうちに必ずしだけがりに傾けて押す癖があった。
だが、この類の印は、定規を当てたように完璧にまっすぐ押されている。
第者が健の過の類から文字の形だけを慎に真似てき、盗みした実印を丁寧に押し当てた証拠だった。
これは健がいたものじゃない。違いなく幸子たちが偽造したものだ。
私は確信した。