"母の尊厳を踏む家なら捨てます" 第10話
「それから、さん」 栞は隆司から線をし、淡々とプランナーに問いかけた。 「母の装についても、何か変更がありましたか?」
は観したように、さな声で答えた。 「……はい。当初ご予約いただいておりました、婦お母様の最級黒留袖のレンタルですが……郎のお母様から『格式がわないからキャンセルするように』とご指示をいただき、平のアンサンブルへの変更をご希望されました」
「平」 栞はさく呟いた。 郎の母は千万円の友禅を着て、婦の母には黒留袖すら着させず、平で隅に座らせる。 見世物のように、徹底に序列を見せつけ、恥をかかせるためだけに。
「栞、分かってくれただろ?」 隆司は栞が静かになったのを見て、自分の説得が通じたと勘違いしたのか、堵したように笑みを浮かべた。 「母さんも悪気はないんだ。ただ相澤の格式を守りたいだけなんだよ。おのお母さんだって、目つ格好して恥をかくより、にしてた方が楽だろ? な? だからもうを張るなよ。居の件も、母さんに言『気言ってすみませんでした』って謝れば、全部許してくれるからさ」
隆司が親しげに栞の肩にを置こうとした。
栞はそのを、迷いなく払い落とした。 ピシャリと乾いた音が、サロンに響いた。
「触らないで」
「……は?」 隆司のが宙で止まった。
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栞はバッグをけ、枚のの振込限度額引きげ完通と、自のクレジットカードを取りした。 そして、に向き直った。
「さん。婦側の招待客、親族と友の計名について、本付で全員の席を取り消してください」
「え……?」 が目を見いた。
「婦の装、着付け、ヘアメイク、ブーケ、そして婦側ゲスト名分の料理と引き物、すべて私の名義で契約していた項目を、今こので全額キャンセルします」
「おい! 栞! 何を言ってるんだ!?」 隆司が子を蹴倒すようにしてちがった。 「席を取り消すって……親戚や友達に何て言うんだよ! もう週だぞ!」
「親戚と友には、昨夜のうちに私から連絡を入れてあります。『こちらの事で結婚を取りやめることになった』と、全員に伝えてあります」
「取りやめる……!?」 隆司の顔から血の気が引いていくのが分かった。 「お、本気で言ってるのか!? 式にいくらかかるとってんだ! もう全額払わなきゃいけない期なんだぞ!」
「ええ、っています」 栞はのバインダーのキャンセル規定のページを指差した。 「挙式からまでのキャンセル料は、見積もり総額のパーセント。ただし、それは『全体をキャンセルした』です。私がキャンセルするのは、私自と、婦側のゲストに関する項目のみです。
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その分のキャンセル規定実費、および私個に請求されるべき違約は、今ここで私がカードで括決済します」
「も、森様……本当によろしいのですか?」 の声が震えていた。
「はい。計算してください。私のドレス、着付け、婦側ゲスト名の料理・料のキャンセル料。私の持ち分として発する費用は、円単位まで私が支払います」
「待てよ! ふざけるな!」 隆司がテーブルにを乗りし、栞の類を奪おうとした。 その目は血り、唾をばしながら叫んだ。 「婦がいない結婚式なんてあるわけないだろ! おがりたら、式全体が止になるんだぞ! そしたら残りの数百万円はどうなるんだよ! うちの会社の司も、役員も、親戚も、みんな来るんだぞ! 僕に恥をかかせる気か!?」
「恥をかかせる?」 栞は静かにちがった。 を切交えない、透き通った声だった。
「私の母親を、配膳の横に座らせて平を着せようとしたあなたたちが、に『恥』を語る資格なんてありません」
「お……!」
「式をどうするかは、相澤でお決めになってください」 栞は徹に言い放った。 「婦側の費用は私が清算します。でも、郎側の費用……あなたの見栄のために追加したシャンパンも、役員用の引き物も、あなた側の親戚の料理も、すべてあなたとお義母様が契約したものです。
私には切、支払う義務はありません」
「払えるわけないだろ!」 隆司のから、けない鳴が漏れた。