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"母の尊厳を踏む家なら捨てます" 第9話

「激するのは勝です」 栞は向かいの席に静かに腰をろした。 「私に無断で契約者を名義変更しようとし、私を連帯保証に仕げようとしたのはお義母様です。私の名義で支払った万円の領収を相澤の名義にき換えさせようとしたのも、からすべて聞きました。それは詐欺まがいの為です」

「さ、詐欺って……母さんはただ、相澤の世体をえようとしただけだろ!」

の財産を横取りしてえる世体なんて、私には関係ありません」 栞は鞄からクリアファイルを取りし、テーブルのに置いた。 「今ここへ来たのは、式との契約について確認するためです。さん、現の最終見積と、席次表の最版を見せていただけますか?」

「え……? あ、はい。こちらになります」 はおずおずと、みのあるバインダーを差しした。

栞はページをめくった。 最終見積もりは、当初の百万円から、万円に増額されていた。 内訳を確認すると、相澤側の親族控への級シャンパンの追加、郎側主賓への引き物のランクアップ(組あたり千円相当のカタログギフトへの変更)、さらに郎側の装幅なボリュームアップが記載されていた。

そして、栞の指が止まったのは、席次表のページだった。

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宴会のレイアウト図。 砂の正面、最も格式の央の円卓には、相澤の本や親戚、隆司の勤務先の司たちの名がずらりと並んでいた。 郎の母である敏恵と父の康男の席は、郎側親族席の最列に堂々と配置されている。

だが、婦側の席を見た瞬、栞の界がすっとくなった。

婦の母である森登紀子の名は、会の最もろ、配膳用のサービストビラのすぐ脇にあるさなテーブルに追いやられていた。 そこは、郎側の物流会社の請け業者や、隆司の代の輩たちが座る席だった。 本来なら婦の母が座るべき親族席の央には、誰の名もなかった。

「……さん」 栞の声は、く、震えていた。 「この席次は、どなたが指示されたものですか?」

は気まずそうに線を泳がせ、隆司の顔を伺った。 「あ……それは……先週、郎のお母様が直接ご来館されまして。席次の最終確定として、ご指定をいただきまして……」

婦の母を、末席の、それも関係のない業者の方々の席と同席にしろと?」

「母さんを責めるなよ!」 隆司が割り込んできた。 焦ったようにでまくしてる。 「母さんが気を利かせてくれたんだよ! 森さん……お義母さんは、うちの会社の司や親戚のことなんて何もらないだろ? の方に座らせられたって、肩が狭いいをするだけじゃないか。

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だから、気楽に過ごせるようにろの席にしてくれたんだよ!」

「気楽に過ごせるように?」 栞は隆司をややかに見据えた。 「配膳の真横で、あなた方の会社の若い社員に囲まれて座ることが、私の母への配慮だと本気でっているの?」

ってるよ! それに、母さんはこうも言ってたぞ」 隆司はき直ったように胸を張った。 「結婚式は、との繋がりを見せるなんだ。うちの側からは役員やの取引先が来るんだよ。そこに、片親で定をやってる母親が堂々と座ってたら、周りから『相澤はどういうと縁を結んだんだ』って詮索されるだろ! 母さんのメンツも考えてくれよ! たった半、端っこでおとなしくしててくれるだけでいいんだからさ!」

サロンの空気が、完全に凍りついた。 プランナーのが、息を呑んで俯いた。接客のプロである彼女でさえ、隆司の言葉の醜悪さに言葉を失っていた。

だが、栞の胸のに広がったのは、りではなかった。 ただ、どこまでも澄み切った、絶対な諦だった。

この男は、悪気があって言っているのではない。 の底から、「自分の母親のメンツを守るためなら、の母親の尊厳などゴミのように踏みにじって当然だ」と信じ込んでいるのだ。 かけて骨の髄まで叩き込まれた、歪んだ特権識と母親への盲従。

話しえばわかる、歩み寄れば変わる。そんなものは、栞の甘いに過ぎなかった。

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