みかん小説
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"母の尊厳を踏む家なら捨てます" 第5話

に乗り、荻窪へ向かう。 窓に映る自分の顔は、青ざめてはいたが、料亭で俯いていたときのような怯えは消えていた。

の喫茶に入ると、奥の禁煙席にの姿がすぐに見つかった。 敏恵は袋を元にいくつも置き、優雅に茶をんでいた。隆司はその向かいで、嫌そうにスマートフォンの画面を指で弾いている。

栞がテーブルの横につと、敏恵は眉をひそめて線を向けた。 「まあ、息を切らして。みっともないわね」

栞は敏恵の言葉を無し、隆司のった。 「印鑑を返して」

隆司はため息をつき、テーブルの端に置かれていた黒い布袋を指先でトントンと叩いた。 「座れよ。周りの目があるだろ」

栞は席に着かず、ったままを差しした。 「返してください。話はそれからです」

「栞さん」 敏恵がカップをソーサーに戻した。カチャリと乾いた音がする。 「あなた、し図に乗っているんじゃありませんこと? 隆司があなたの事なおを無駄遣いするとでもってらっしゃるの? 男をてるということを、お母様から教わらなかったのかしら」

「お義母様、これは私の個財産です」 栞は敏恵をまっすぐに見据えた。 「母から受け継いだおと、私が働いて貯めたおです。結婚式にかかる費用は、当初の見積もり通り半額ずつ負担すると決めていました。

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追加分を勝に増やし、私の預を無断で充てる理由はありません」

「理由ならありますよ」 敏恵は顎をげ、値踏みするように栞を見げた。 「あなたの実、結納をお断りになったでしょう? 『形式なことは省いて、子供たちの活に使ってください』なんて、もっともらしいことを言って。するに、持参銭も用できないってことじゃありませんの。さな定じゃ、娘入り用の支度せないのは仕方のないことですけれど、その分、あなたが相澤に誠を見せるのは当然でしょう?」

持参。 いつの代の話をしているのかと眩暈がしそうだった。 結納を略式にしたのは、隆司が「堅苦しい儀式はお互いの負担になるからやめよう」と提案してきたからだ。それを今になって、「さない言い訳」にすり替えられている。

「隆司さん、あなたも同じ考えなの?」 栞は隆司を見ろした。

隆司は線をわせず、をかいた。 「……まあ、母さんの言うことも極端だけどさ。でも実際、うちの親戚への体裁もあるし。森さんのから何もないとなると、僕のがないんだよ。たかだか百万かそこら、定期を崩して充ててくれたっていいだろ。僕だってで返すって言ってるんだから」

「返す? どうやって?」 栞は問い詰めた。 「あなたの先細、見せてもらったよね。

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取り万のから、のローンが万、カードのリボ払いが万、残りはとゴルフで消えてる。貯万しかない。毎どこから私に返すつもりなの?」

隆司の顔が、りと屈辱で真っ赤に染まった。 「おの財布のを勝に……!」

「勝じゃない。計をつにする提で、で確認しった数字でしょ」

「もうおやめなさい!」 敏恵がテーブルをのひらで叩いた。周囲の客が何事かとこちらを振り返る。 敏恵は周囲の線に気づくと、すぐに声を潜めたが、その瞳にはどす黒いりが宿っていた。

「本当にはしたない。夫になるの収入をで暴きてて、恥というものをらないのかしら。隆司、こんな女に財布を握らせたら、相澤は破滅ですよ。おの管理はすべて私が引き受けます。この子の通帳も、印鑑も、私が預かって計画に使ってあげます」

敏恵はそう言い放つと、隆司のにある黒い布袋にを伸ばした。

その瞬、栞のいた。 敏恵の指先が触れるよりく、テーブルのの布袋をひったくるように掴み取った。

「あ……! あなた、何をするの!」 敏恵ががりかけた。

「これは私のものです」 栞は印鑑の入った布袋をバッグの奥底へねじ込み、ファスナーをしっかりと閉めた。 臓が鐘を打っていたが、指先はもう震えていなかった。

「隆司さん、居の初期費用として私が払った万円、返してください」

「……は? 何言ってるんだよ、お

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