"16歳、家を出た姉" 第9話
の若い女がりた。
呂敷をつ持っていた。
最初に気づいたのは郎だった。
しれた畑から女を見つめ、しばらく首を傾げた。
そして突然りした。
「姉ちゃん!」
のにいたツネが顔をした。
勇も正男もへた。
ふさはにしていた桶を置いた。
千代がっていた。
20歳になっていた。
4よりし背筋が伸び、びた顔になっていたが、笑うの目元は昔と同じだった。
郎が真っ先に抱きついた。
「きくなったね」
「俺、もう学ってる」
「ってるよ」
「何で」
「にいてあったから」
ツネが駆け寄った。
千代は母の顔を見ると、急に何も言えなくなった。
「ただいま」
やっとそれだけ言った。
ツネは娘の肩を抱いた。
「おかえり」
勇はしれたところから見ていた。
、ので見た姉より、今の方がしふっくらしている気がした。
正男が照れながら言った。
「姉ちゃん」
「卒業したんだって?」
「うん」
「おめでとう」
「姉ちゃんのおかげ」
千代はすぐに首を振った。
「正男がったんだから、正男のおかげだよ」
族が集まる、源蔵だけは玄関のからかなかった。
千代も気づいた。
母の肩かられ、父のへ歩いていった。
4ぶりだった。
源蔵は娘の顔をじっと見た。
千代も父を見た。
どちらも、言いたいことはほどあったはずだった。
それなのに源蔵が最初に言ったのは、
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「遅かったな」
だった。
千代はし笑った。
「うん」
「飯、ってきたか」
「まだ」
源蔵はのを指した。
「おの茶碗、あるぞ」
千代の表が崩れた。
「……まだあったの?」
源蔵は答えなかった。
先にへ入っていった。
千代はその背を見つめたまま、涙を拭った。
その夜、佐々の卓には久しぶりに分の子どもの茶碗と、両親の椀が並んだ。
千代がをたと比べれば、卓はしだけ豊かになっていた。
とはいえ米だけの飯ではない。
粟も混じっていた。
漬物。
噌汁。
さな焼き魚が尾あり、それを皆で分けた。
「こんなにべていいの?」
千代が尋ねると、ツネが笑った。
「今はいいんだよ」
「でも」
「帰ってきたくらい黙ってべな」
郎はくも杯目を平らげた。
「母ちゃん、おかわり」
その声に千代が笑った。
4、空の椀を箸でこすりながら「もうないの」と言っていた弟だった。
今は腹が減れば、何の慮もなくおかわりと言う。
千代にとって、それだけで4働いたがあったようにえた。
勇は役の仕事を始めていた。
正男は等科へむ。
ふさは母の仕事を伝いながら、裁縫を覚えていた。
は決して豊かではない。
それでも、4のようにがべれば誰かの分がなくなる状態ではなかった。
事の途、源蔵がちがった。
戸棚の奥から布包みを持ってきた。
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「これ」
千代のへ置いた。
包みをけると、見覚えのある茶碗がてきた。
縁にさな欠けがある。
千代が16歳まで使っていた茶碗だった。
「本当に取ってあったんだ」
源蔵は黙って座った。
「父ちゃん」
「何だ」
「ありがとう」
源蔵は噌汁をんだ。
「礼言われることじゃない」
千代は茶碗を両で持った。
し古く、表面には細かな傷があった。
それでも、自分のに議なほど馴染んだ。
事が終わったあと、源蔵は千代を呼んだ。
だけでへた。
「これも」
父はさな箱を差しした。
にはが入っていた。
千代は驚いた。
「何これ」
「おの」
「私の?」
「送ってきたやつ全部じゃない。使わんで済んだ分だけ残した」
千代は箱を見た。
「何で」
「おのだからだ」
「に送ったんだよ」
「分かってる」
「だったら使えばよかったのに」
「使った」
源蔵はぶっきらぼうに答えた。
「米も買った。噌も買った。正男のも、勇の本も買った」
それからし黙った。
「でも全部は使えなかった」
千代は父を見た。
源蔵は線をした。
「毎来るたび、けなくなった」
「何が」
「16の娘にわせてもらってるみたいで」
千代は首を振った。
「違うよ」
「同じだ」
「違う」
「俺がわせるはずだった」
父の声がくなった。
「おら全員、俺がわせるはずだった」
千代は初めて、父が4何を背負っていたのか分かった気がした。
自分は族を救うためにをた。
けれど父にとって、その歩は「娘を守れなかった」という証拠になっていたのだ。