"16歳、家を出た姉" 第8話
帳面をつけたり、配や税に関する類を運んだりするうち、しずつの仕事を任されるようになった。
正男も学へ通い続けた。
以なら、計が苦しくなれば途で働きにされてもおかしくなかった。だが千代からの5円と、勇がしずつへ入れるで、佐々はどうにか子どもを学へ通わせることが来た。
「姉ちゃんの、いつまで使うんだろ」
ある夜、勇が父に尋ねた。
源蔵は縄を直しながら答えた。
「使わんと、あいつがる」
「そうだけど」
「正男が学たら終わりだ」
勇は父を見た。
「姉ちゃんもそう言ってた」
「……そうか」
源蔵はそれだけ言った。
だが数、勇は父がさな箱へを入れているのを見た。
「それ何?」
「何でもない」
「姉ちゃんの?」
源蔵はしばらく黙ってから答えた。
「しずつ返す」
「誰に」
「千代に決まってるだろ」
勇は驚いた。
父は千代から届いたをすべて使っていたわけではなかった。
活に必な分だけ使い、余裕が来たはわずかでも残していた。
「返すって、姉ちゃん受け取らないとうよ」
「それでもいい」
「じゃあ何に使うの」
「帰ってきたに考える」
その言葉を聞き、勇はし笑った。
「帰ってくるとってるんだ」
源蔵の顔が険しくなった。
「何だ」
「いや」
「帰ってくるに決まってる」
それは、千代がをてから父が初めてにした言葉だった。
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になると、の農はさらに苦しくなった。
作物がうように取れず、によっては娘をくへ奉公にす話も珍しくなかった。のでも若い娘が、またと姿を消していった。
「うちの娘も町へすことにした」
所の男が源蔵へ言ったことがある。
「千代ちゃんみたいに親孝してくれればいいんだがな」
源蔵は顔をげた。
「千代を親孝だなんて言うな」
男は驚いた。
「何でだ」
「16の子が族の飯を配してていくのを、親孝で済ませるな」
それ以、源蔵は話さなかった。
勇はしれたところで聞いていた。
父は姉を誇りにっている。
同に、その誇りをんではいけないとっている。
そんな複雑な気持ちが、勇にはしずつ分かるようになっていた。
方、盛岡ので働く千代にも変化があった。
によれば、の女が増え、千代が仕事を教えるになっていた。
《この、15歳の子が入ってきました》
《夜になると母ちゃんに会いたいと泣きます》
《私は何と言えばいいか分かりません》
その文を読んだ、ツネはいを握っていた。
千代も16歳だった。
きっと同じように、最初の夜は泣きたかったのだ。
ただ誰にも見せなかっただけなのだろう。
昭11の、正男が尋常学を卒業した。
卒業証を持って帰ると、ツネは何度もそれを撫でた。
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「千代に見せたいね」
「にけばいいよ」
正男は照れくさそうに笑った。
等科へむことも決まっていた。
が番苦しかった頃なら、考えられなかったことだった。
そのの夕方、源蔵は千代から届いていた最の5円をに取った。
「もう送らんでいいってけ」
ツネは父を見た。
「本当に?」
「正男は卒業した」
「等科へくよ」
「俺と勇で何とかする」
勇も頷いた。
「俺も役で仕事増えたし」
源蔵はしばらく為替を見つめた。
「もういい」
その晩、母は千代へをいた。
《正男が卒業しました》
《等科へきます》
《勇も役で働いています》
《もう毎5円を送らなくて丈夫です》
最に、
《帰ってきても、分増えたなんて誰も言いません》
といた。
源蔵はその文を読んだ。
何も直さなかった。
をしてからか。
千代から返事は来なかった。
か目。
為替も届かなかった。
族は皆、し落ち着かなかった。
送らなくていいといたのだから当然なのに、毎届いていたものがなくなると、姉との繋がりまで消えたようにじた。
「元気かな」
郎が言った。
もう7歳になっていた。
「元気だよ」
ふさが答えた。
「どうして分かるの」
「姉ちゃんだから」
それは説になっていなかったが、郎は納得した。
がまったあるの午だった。
へ本のバスが入ってきた。
留所でりるは普段なかったため、畑にいた子どもたちが何となくそちらを見た。