"16歳、家を出た姉" 第6話
「きくなったね」
千代はそれだけ言った。
勇の目から涙がこぼれた。
「姉ちゃん」
「何」
「きてたんだな」
千代は瞬きょとんとしたあと、さく笑った。
「何だとってたの」
その笑い方を見た瞬、勇はやっと姉を見つけたのだとった。
千代の仕事が終わったあと、はからしれた川べりへった。
夕暮れの面は暗く、町の方からの煙が流れてきていた。千代は原のへ腰をろし、勇も隣へ座った。
しばらく、どちらも何も言わなかった。
先にをいたのは勇だった。
「、ずっと来てるよ」
「うん」
「毎5円」
「ちゃんと届いてる?」
「届いてる」
千代はしたように息を吐いた。
「よかった」
その顔を見て、勇は急に腹がった。
「よかったじゃないよ」
千代が弟を見る。
「何」
「何でかなかったんだよ」
「……」
「母ちゃん、毎郵便の音気にしてたんだぞ。父ちゃんだって何も言わないけど、ずっと待ってる」
千代は川へ目を戻した。
「最初のかはいたよ」
勇は驚いた。
「いたの?」
「うん」
「じゃあ何で送らなかった」
千代は膝のでをねた。
そのは16歳の女のものとはえないほど荒れていた。
「いてたらね」
声がさくなった。
「郎が泣いてないかとか、ふさは邪ひいてないかとか、正男のは買えたかなとか、勇は父ちゃんと喧嘩してないかなとか」
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「……」
「母ちゃん、ちゃんと飯べてるかなとか。父ちゃん、まだってるかなとか」
千代はし笑った。
「そんなことばっかりになった」
「それで?」
「帰りたくなった」
勇は何も言えなかった。
「枚いたら、帰りたくなった。だから破った」
千代は川の向こうを見た。
「帰ったら、また分増えるでしょ」
「そんなこと」
「増えるよ」
千代ははっきり言った。
「私はそのためにてきたんだもの」
勇の胸がくなった。
「じゃあ帰らないつもりだったのか」
「分からない」
「何だよそれ」
「分からないものは分からないよ」
「父ちゃん、ずっと姉ちゃんの話しないんだぞ」
その言葉で千代の顔が曇った。
「ってるんでしょ」
「違う」
「だって私、勝にてきたし」
「違うって」
勇はく言った。
「父ちゃん、自分が姉ちゃんを追いしたとってる」
千代が顔をげた。
勇は、あの夜に見た父の姿を話した。
千代の茶碗を戸棚からしていたこと。
為替が届くたび、使うに仏壇へ置いていること。
「毎5円来るだろ」
勇は言った。
「父ちゃん、あれ見ても度も嬉しそうな顔しない」
「何で仏壇に置くの」
「俺もらない」
「……」
「でも、姉ちゃんの使う、いつもわせてる」
千代の目に涙が溜まった。
「父ちゃん、あの、私を叩いたから」
「姉ちゃんだって言いすぎたんだろ」
「本当のこと言っただけだよ」
「それでも」
勇は度を閉じた。
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父をかばいたいわけではなかった。
姉を責めたいわけでもない。
ただ、にいたで、自分が見てきたことを伝えたかった。
「父ちゃん、たぶんあののこと、ずっと悔してる」
千代は俯いた。
「私は悔してない」
「たこと?」
「うん」
その答えに勇は驚かなかった。
姉ならそう言うとっていた。
「、きつい?」
「きついよ」
千代は笑った。
「朝から晩まで同じことして、指が痛くなるし、はがたいし。最初は夜になるとがかなくなった」
「だったら帰ればいいじゃん」
「でも飯はべられる」
「……」
「寝るところもある。働いた分、もる」
千代は自分の荒れたを見た。
「にいたら、私がべる分を父ちゃんと母ちゃんが減らすでしょ」
勇は返す言葉を失った。
しばらくして、千代が尋ねた。
「郎、きくなった?」
「うるさいくらい」
「ふさは?」
「母ちゃん伝ってる」
「正男は学ってる?」
「ってるよ」
「、買った?」
勇は笑った。
「姉ちゃんの5円で買った」
千代も笑った。
その笑顔のに、しだけ救われたようながあった。
勇はそこで初めて、毎の5円が姉にとって単なるではなかったのだと気づいた。
族が今も飯をべた。
弟が学へった。
その証拠を、千代は送という形で確かめていたのだ。
その夜、勇はくの宿へ泊まった。
翌朝く、千代が宿まで来た。
仕事へ向かう途らしく、昨と同じような質素な着物を着ていた。
「これ」
千代はさな封筒を差しした。
「母ちゃんに」