"16歳、家を出た姉" 第3話
縁にさな欠けのある茶碗を両で持ち、何をするでもなく見つめてから、また棚へ戻した。
勇は姉がていったことに腹をてていた。
勝だとった。
自分たちのためだと言いながら、言も相談せずにいなくなった。父に叩かれたことも、が貧しいことも分かっていたが、それでも自分まで置いていかれたような気持ちがした。
夜になると、弟たちの寝息を聞きながら考えた。
姉ちゃんは今、どこで寝ているのだろう。
ちゃんと飯をべているのだろうか。
らない町で泣いていないだろうか。
最初のか、便りはなかった。
か目も来なかった。
ツネは毎のように郵便配達の自転の音へを澄ませたが、佐々ので止まることはなかった。
か目の終わり。
がり始めたの午だった。
「佐々さん、為替だよ」
郵便配達の林が通の封筒を持ってきた。
ツネは濡れたを掛けで拭いて受け取った。
ではなかった。
郵便為替だった。
差の欄には、盛岡にある料理の名がかれていた。
額は5円。
「千代からだ」
ツネは為替を何度も見た。
勇も横から覗き込んだ。
「姉ちゃんの名ないよ」
「の名になってるだけだよ」
「でも姉ちゃんからなんだよな?」
ツネは答えず、源蔵を見た。
父はにったままだった。
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「使いな」
ツネが言った。
源蔵は為替を受け取ったが、すぐには懐へ入れなかった。
その夜、5円の為替は仏壇のに置かれていた。
「何で仏壇なんだ?」
勇が聞いても、父は答えなかった。
翌、源蔵は町へた。
米を買った。
噌を買った。
勇の破れていた教科を買い替え、正男にはしいを本買った。
郎は久しぶりにい米粒の混じった飯をへ入れ、嬉しそうに笑った。
「今の飯、い」
その言葉を聞いたツネは笑ったが、すぐに俯いた。
千代がをて初めて届いたで、族は久しぶりに腹を満たした。
勇は、それが嬉しいことなのかしいことなのか分からなかった。
翌も5円が届いた。
また翌も5円。
が来ても、になっても、毎ほとんど同じ頃に為替が来た。
度も途切れなかった。
それなのに、だけは通も届かなかった。
「姉ちゃん、字けるのに」
ある夜、勇が言った。
ツネは針仕事をしながら、「忙しいんだろ」と答えた。
「でも、は毎送れるんだろ?」
「のに頼んでるんじゃないの」
「だったら枚くらい入れられるじゃん」
ツネのが止まった。
「勇」
「何」
「千代だって、自分の暮らしで精いっぱいなんだよ」
言葉は穏やかだったが、母自も同じ疑問を持っていることが勇には分かった。
目の正にも千代は帰らなかった。
盆にも戻らなかった。
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の々は佐々の事をっていた。
「千代ちゃん、いい奉公先に当たったらしいな」
「親孝な娘だ」
「毎5円も送ってるそうじゃないか」
そんなことを言われるたび、ツネは曖昧に笑った。
源蔵だけは笑わなかった。
為替が届くたび、自分のののをじっと見つめた。
そして必ず度、仏壇のへ置いた。
ある晩、勇は夜に目を覚ました。
喉が渇いて台所へくと、暗い部で誰かがいていた。
源蔵だった。
父は戸棚の奥から千代の茶碗をしていた。
縁の欠けたさな茶碗をに取り、指で縁をなぞっていた。
「父ちゃん」
声をかけると、源蔵は驚いた。
「何してるの」
「何でもない」
「姉ちゃんの茶碗だろ」
源蔵は答えず、布で茶碗を包んだ。
「捨てないの?」
勇が尋ねると、父は顔をげた。
「何で捨てる」
それだけ言って、棚の番奥へ戻した。
勇はその初めて、父も姉を待っているのだと分かった。
ただ、待っていると言うことが来ないだけだった。
目に入っても、5円は来続けた。
千代からのはない。
勇ので、びよりもの方がきくなっていった。
毎届くが、姉が元気に働いている証拠だと皆はっている。
けれど、本当にそうなのだろうか。
もし違ったら。
その考えが、かられなくなった。
15歳になった、勇は学帰りに郵便局ので林を見かけた。
赤い自転を壁へてかけ、郵便袋のを理していた林へ、勇はい切って声をかけた。
「林さん」