"1800円の御膳が1万8000円になった日――覆面社長が見つけたホテルの嘘" 第11話
支配の妻
藤堂美佐子は、属ケースから分いファイルを取りした。
「これが作業報告です。帳簿を捨てたと言ったのは、保管期限の過ぎた古いメモのこと。1260万円は正当に受け取った報酬です」
36枚の報告には、それぞれ清掃と清掃の写真が貼られ、藤堂雅彦の検収印まで押されていた。美佐子は勝ち誇ったように腕を組む。
「夫婦だから疑われるのは分かります。でも、く引き受けてホテルを助けてきたんです。謝罪して、止めた支払いをすぐ戻してください」
私は反論せず、最初の報告を窓際の照へかざした。印刷された写真には、宴会の赤い絨毯と黒い染みが写っている。次の報告も、角度を変えただけで染みの形は同じだった。
榊原が原本の子データを確認すると、36件の報告に使われた写真は、わずか6枚を切り抜き、るさや向きを変えたものだった。しかも元画像は、4にわれたホテル改装の記録写真と致した。
画面に6枚の元画像と36枚の報告写真が並ぶ。同じ子の脚、同じ絨毯のほつれ、窓ガラスに映った同じ照。を暗くしてもを反転しても、消せない特徴が残っていた。美佐子は1枚目ではで笑っていたが、比較がむにつれて腕をほどき、属ケースの持ちへをかけた。
「そんなもの、偶然よ。
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絨毯の汚れなんて似るでしょう」
美佐子はファイルを取り返そうとしたが、野がで制した。
「提された以、写しを取らせていただきます。作業員への与支払い、洗剤や材の購入、両の記録はありますか」
「さな会社なんです。現で払うこともあります」
「何で作業したのですか」
その問いに、美佐子は答えられなかった。登記の所は藤堂夫妻の自宅で、従業員名簿も提されていない。会社の振込記録が示すのは、ホテルから青葉クリーンサービスへ1260万円を送った事実までで、その先ののきはまだ確認できない。だから私は、横領だと断定する言葉を使わなかった。
ただし、藤堂が私へ差しした500万円については、録音と現物がある。
「あれはの貯です。このが何に使おうと自由でしょう」
美佐子が言い切ると、藤堂は救われたように頷いた。
私は事務の庫管理簿をいた。500万円の封筒が置かれていた所はホテルの業務用庫であり、帳簿の残と実際の現には差がている。個資だというなら、いつ、誰が、何のために持ち込んだのかを示す必があった。
午622分、玄関に2の捜査員が現れた。2週から相談を受けていた県警の担当者である。誰かをそので逮捕するためではない。会社から追加資料を受け取り、現や類の状態を確認し、関係者を別々に聴取するために来てもらった。
藤堂夫妻、松井、井はれた席へ案内された。捜査員の1が内映像を確認している、美佐子はサングラスをし、何度もへ線を向けた。
別の捜査員に話を聞かれた松井は、藤堂が末ごとに事務で現を分けていたことを認めた。井も、自分が記録した付と額を指し示す。2の供述だけで結論はせないが、ノートの記載、庫の差額、映像の刻が同じ流れを示し始めていた。
やがて映像が止まり、画面に刻が拡される。
そこには、今の午237分、事務から段ボール箱を運びす美佐子の姿が映っていた。
捜査員は静かに尋ねた。
「藤堂美佐子さん。あなたは先ほど、今ここへ来たのは初めてだと話しましたね」