"1800円の御膳が1万8000円になった日――覆面社長が見つけたホテルの嘘" 第8話
503件の裏側
井が庫から取りしたのは、表の擦れた学ノート3冊だった。
各ページには付、テーブル番号、正規料、客へ請求した額、現を渡した相が細かな字で並んでいる。席は「A」と「B」に分けられ、Aには通常会計、Bには別伝票と記されていた。
今の欄には、私の注文が「1800/18000」、澄の注文が「3000/30000」と記録され、受取の欄には藤堂の文字である「T」が付いていた。私たちが確保した領収、録音、POS刻と1分のずれもない。
「Bは、柱のの席ですか」
私が尋ねると、井は俯いたまま頷いた。
藤堂は予約名、装、齢を見て客を選び、断りにくそうなをB席へ通していた。最初の半は数千円の乗せだったが、反論する客がないと分かると、料理代の5倍、最には10倍まで請求額を引きげたという。
「どうして、もっとく本社へらせなかったのですか」
「度、内部通報窓へ送ろうとしました。でも支配に見つかって、族の勤務先までっていると言われました。次に逆らえば、全部私がやったことにすると……」
ノートの最には、井自が受け取った額も記されていた。3万円。命令されたからといって、利益を受け取った事実は消えない。井もそれを理解しているのか、弁解せずに「処分は受けます」とをげた。
井の声は震えていた。しかし、黙ってを受け取り続けた責任まで消えるわけではない。
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私は同だけで判断せず、ノートを榊原へ預けた。
監査班は、3冊の記録をPOSデータ、503件のアンケート、勤務表と照した。数字が致したには緑、確認できないには黄の印が付けられていく。
午5を過ぎた頃、榊原が集計結果を読みげた。
「現段階で、請求を確認できた取引は486件です。当な差額は計837万6000円。残り17件は、現記録か顧客報がしているため、引き続き確認します」
503件という鳴が、486件の取引と837万6000円という具体な被害へ変わった。
画面には被害者の齢分布も表示された。65歳以が約6割を占め、残りも学、客、さな子どもを連れた親がい。偶然選ばれたのではない。言い返しにくいを見た目で探し、同じ所へ座らせ、同じ言葉で脅していたことが数字からも浮かびがった。
藤堂はソファに座らされ、額の汗を何度もハンカチで拭っていた。逃げが消えたとわれたその、彼は突然顔をげた。
「私だけの責任ではない」
「何を言っているのですか」
「本社が数字を求めたんでしょう。利益率、顧客満度、リピート率。成績が落ちれば支配をろす、賞与も減らす。古い建物の修繕費は認めないのに、都会のしいホテルと同じ結果をせと言った」
藤堂の声は次第にきくなった。
「評価の客だけを残し、を取れる客から取らなければ、このは18舗2位になれなかった。
私は社が望んだ数字を作っただけだ。責任を問われるべきなのは、現を追い込んだ本社でしょう」
松井も井も黙り込み、監査担当者たちの線が私へ集まった。
藤堂の詐欺まがいの請求やの持ちしは、どんな制度でも正当化されない。それでも、彼が利用した評価制度を作り、ホテルの現より報告を信じてきたが誰なのか、私はっていた。
胸の奥に痛みがったが、目をそらすつもりはなかった。
私は藤堂のまで歩き、静かにをいた。
「その制度を作ったのは、私です」