"1800円の御膳が1万8000円になった日――覆面社長が見つけたホテルの嘘" 第7話
崩れた支配の
私の声が、藤堂のに当てられた話から拍遅れて響いた。
「はい、瀬です」
彼は自分の端末と私の顔を何度も見比べた。先ほどまで赤みを帯びていた頬から血の気が引き、握っていた話が刻みに震えている。
「そんなはずがない。社が、そんな格好で来るわけが……」
「あなたは最まで、装でしかを判断できないのですね」
藤堂の線が、私の擦れたシャツの袖から顔へゆっくりがってきた。その目に浮かんでいたのは反省ではなく、自分よりのを侮辱してしまったという恐怖だった。もし私が本当に無力な客なら、彼は今も笑っていたに違いない。
私は通話を切り、社員証をレジ台へ置いた。そこには顔写真とともに、代表取締役社、瀬直と記されている。
松井の膝が目に見えて揺れた。
「しゃ、社……私は支配に命令されただけです」
「つい先ほどまで、私を無銭で警察へ突きすと言っていましたね」
松井はをいたまま声を失った。藤堂はなおも「これはを守るための臨措置だった」と言い張ったが、テーブルには500万円の札束との会計類が残されている。
私は分をかした瞬に謝罪を受け入れるつもりはなかった。彼らが悔やんでいるのは、客を傷つけたことではなく、傷つけた相が社だったことだけだからだ。
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ここで許せば、澄や名も分からない503をもう度見捨てることになる。
私はスマートフォンを度だけ操作した。
レストランの自ドアがき、榊原を先に監査担当者4と野が入ってきた。全員がまっすぐ私のまでみ、く礼する。
入側と事務側へ2ずつ分かれ、誰がどの器に触れたかを記録し始めた。営業を止めるための乱暴な突入ではない。般の従業員と客を巻き込まず、会社の資料だけを現の状態で保するため、2週から決めていた順だった。
「社、ご指示どおり、会社サーバー側のデータ保全は完しています」
その呼びかけで、藤堂のわずかな希望も消えた。
野は類をき、本1518分付で藤堂、松井、井の業務権限を止すると告げた。処分を確定するためではなく、証拠への接触と顧客への働きかけを防ぐ措置である。
「舗の閉鎖命令ではありません。会社所のPOS、業務端末、庫、防犯カメラについて、現状を保します。削除や持ちしを試みれば、その事実も記録します」
担当者が器の刻を撮し、封印番号を付けていく。別の者は500万円をそので数え、封筒とともに撮した。藤堂が庫へ戻そうとを伸ばしたが、野が静かに遮った。
「触れないでください。先ほどの会話は記録されています」
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「違う。これは私個のだ。買収するつもりではなかった」
「では、なぜ『報告からせ』と言ったのですか」
私が尋ねると、藤堂は唇を噛み、松井を睨んだ。
その線を受けた松井は突然、堰を切ったように話し始めた。客を奥の席へ案内する基準、10倍のき伝票、警察という言葉で黙らせる台本。その全てを藤堂が作ったのだと訴える。
「俺は逆らえなかったんです。断ったら契約を切ると言われて……」
「楽しそうに客を笑っていたのは誰だ!」
藤堂が松井の胸元をつかもうとした。監査担当者がへ入り、をす。静かなホテルレストランは、責任を押しつけう声で満たされた。
その、れた所にっていた井が、さな声をげた。
「私、記録を残しています」
彼女は制のポケットから事務の鍵をし、奥にある庫を指した。
「藤堂支配から、最は私の入力ミスにすると言われていました。怖くなって、毎の額と指示を全部いていたんです」