"一枚のタダ券から始まった家族" 第2話
さな体で唐揚げを何個も平らげ、噌汁までみ終えると、急に眠そうに目をこすり始めた。君子が奥から古い毛布を持ってくると、女は母親の膝へを預け、数分もしないうちに寝息をてた。
閉の堂には、音と蔵庫のい唸りだけが残った。君子は歩美を起こさないよう声を落とし、苗の向かい側へ座った。健は厨で洗い物をしていたが、蛇のを止めたまま、の話へを傾けていた。
「帰るところはあるの?」
君子の問いに、苗はすぐには答えなかった。膝で眠る娘の髪を撫でながら、いをかけて言葉を探し、やがて3に夫を病気でくしたことを話し始めた。
夫の治療が引き、わずかにあった貯はほとんど使い切った。そのはスーパーのパートで働きながら娘を育ててきたが、この、親子そろってをして仕事を何も休み、先ついに賃を払えなくなった。勤務数を減らされたことで収入も落ち、数からは事を回に減らしていたという。
「今、アパートのさんに、もう待てないと言われました。頼れる親戚もいません。歩美には何も言わず町を歩いていたんですけど……この先、どうしたらいいのか分からなくなって」
苗の目から涙が落ち、テーブルにさな染みを作った。
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端で濡れたサービス券を見つけた、くなった夫が以「駅にうまい唐揚げのがある」と話していたことをいしたという。夫と度だけ来たことのあるが、川堂だった。
「最に主が好きだった唐揚げを、この子にもべさせてやりたかったんです。個だけなら、この券で何とかなるんじゃないかって……そんなことを考えるくらい、追い詰められていました」
君子は何も言わず、苗のを包んだ。そのも震えていた。
健はしばらく厨にっていたが、やがてを拭きながらてきた。そして苗ではなく、眠っている歩美を見た。
「2階に部がある。使え」
苗が顔をげた。君子まで驚いたように夫を見る。
「あなた……あの部を?」
「空けたままにしても仕方ないだろ。昼はここで働けばいい。料はしてせんが、飯には困らん」
苗は何度も瞬きをした。その言葉のを理解した途端、両でを押さえ、声をさずに泣き始めた。
その夜、に濡れた枚の無料券は、2つの族の止まっていたを、ほんのしだけかした。
けれど苗はまだらなかった。
自分たちがこれから眠る2階の部を、川夫婦が10、度も片づけられずにいた理由を。
川堂の2階には、廊を挟んで3つの部があった。健と君子が使っている寝のほかに、さなと、もうつ8畳ほどのがあり、苗と歩美が案内されたのは番奥のだった。
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君子が扉をけると、そこには空き部とはえないほど活の気配が残されていた。
壁際には古い理箪笥が置かれ、机のには鉛の入った缶や折りが残っている。壁には幼い子どもが描いたひまわりの絵、その横には若い夫婦と女の子が並んだ族写真が何枚も貼られていた。10ほどの写真らしくし褪せているものの、3の笑顔だけは今も鮮だった。
「布団はここにあるからね。シーツも洗ってあるし、寒かったら毛布をもう枚持ってくるよ」
君子はなるべく何でもないことのように話しながら、押し入れから布団をした。しかし苗には、この部がく使われていない方で、定期に掃除され続けてきたことが分かった。机にも棚にも埃がほとんどなく、窓辺に置かれたさな陶器の瓶には、最替えたらしいまで入っている。
歩美は壁の写真を見げ、「この子、あゆみと同じくらい?」と尋ねた。写真の央にいる女は5歳か6歳ほどで、肩までの髪を赤いゴムで結び、黄いワンピースを着ていた。笑ったにの頬だけにえくぼができるところまで、今の歩美とどこか似ている。
君子はし黙ったあと、「そうね、その写真を撮った頃は5歳だったとう」と答えた。さらに箪笥の番の引きしをけると、さな女の子用のがきちんと畳まれており、「サイズがうものがあったら使って」