"夫の実家は空き家だった" 第5話
裕介は何も言わない。
私も何も言わない。
そんな状態が数続いた。
そしてけ最初の曜。
昼を終え、でコーヒーをんでいただった。
玄関のチャイムが鳴った。
ドアホンを見ると、50代半くらいの男女が並んでっていた。とものコートを着ており、女性はふっくらした体格で、どこか親しみやすい顔をしている。
「誰だろう」
裕介がキッチンにいたので、私はで玄関へ向かった。
「はい」
扉をける。
すると女性が、満面の笑みを浮かべた。
「ああ、若菜さん?」
「はい?」
「このは級な蟹、ありがとうね。あんな派なの、久しぶりにべたわ」
私は固まった。
「……蟹?」
「裕介ったら、こんな綺麗なお嫁さんと結婚したのに全然紹介してくれないんだもの」
隣の男性も穏やかにをげた。
「突然すみません。せめて度ご挨拶をといまして」
が分からなかった。
「あの……どちら様でしょうか」
その瞬。
背からきな音がした。
「ちょっと待って!」
振り向く。
裕介が青ざめた顔でっていた。
女性を見る。
男性を見る。
そして私を見る。
「なんで……なんで来たんだよ」
その声は鳴っているというより、追い詰められたの叫びにかった。
女性も戸惑った。
「だって、あなた結婚したって連絡だけで、半も若菜さんを紹介してくれないでしょう。それに蟹の箱に所がいてあったから……」
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私はゆっくり女性へ向き直った。
「もしかして」
声がかすれた。
「裕介の……ご両親ですか?」
女性の顔から笑顔が消えた。
男性も困ったように裕介を見た。
「そうですが」
界が揺れた気がした。
目ののは、レストランで会ったとは全く違った。
以「義母」として紹介された女性は細で品な着物姿だった。目のの女性はふくよかで、柔らかな丸い顔をしている。
男性も違う。
声も。
顔も。
雰囲気も。
何もかも違う。
「裕介」
私は夫を見た。
「どういうこと?」
「若菜、説するから」
「何を?」
でリビングへ移った。
私は震えるでコーヒーを入れたが、誰もほとんどをつけなかった。
ようやく私は裕介に聞いた。
「レストランで会ったたちは誰なの?」
裕介は俯いたまま答えない。
「あなたのお父さんとお母さんじゃなかったの?」
い沈黙のあと。
裕介がさな声で言った。
「レンタル族」
私は聞き返した。
「何?」
「あの、レンタル族のサービスで頼んだなんだ」
本物の義父がテーブルを叩くようにを乗りした。
「どういうことだ、裕介」
裕介は肩を震わせた。
「ごめん」
「謝るに説しなさい」
義母は泣きそうな顔をしていた。
私はりより、理解できないという気持ちの方がきかった。
両親がくなっているなら分かる。
絶縁しているなら、それも事として理解できる。
けれど、目のにはきている両親がいる。
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しかも、息子を配してわざわざ訪ねてきた。
「どうして、赤のを両親として私に会わせる必があったの?」
裕介はしばらく唇を噛んでいた。
やがて、今まで聞いたことのないほどい声で言った。
「昔の俺を、若菜にられたくなかったんだ」
裕介の最初の言を聞いても、私はが分からなかった。
「昔のあなた?」
裕介は両をく握った。
「俺、さい頃すごく太ってたんだ」
話があまりにも予で、私は言葉を失った。
義母がさく息をんだ。
「裕介……」
「学の頃からずっと、太っちょとかデブとか言われてた。父さんも母さんも昔から体がきかったから、親子そっくりだって笑われて」
義父は黙ったまま息子を見ていた。
裕介はさらに続けた。
学の頃、好きだった女の子に気持ちをられたことがあった。
その子は友たちので笑った。
「お母さんそっくりだね」
そこまではまだよかった。
続けて言われた言葉が、裕介のに残った。
「くにいたら私まで太りそう。こっち来ないで」
周囲の子たちが笑った。
学の裕介も笑ったふりをした。
けれどへ帰って、自分の部で泣いたという。
「そんなことがあったの……」
義母の声が震えた。
「らなかった」
「言えるわけないだろ」
「でも、私たちは……」
「分かってる。父さんと母さんが悪いわけじゃない」
裕介は首を振った。
になる頃から、彼は体を変え始めた。
毎朝った。
で腕て伏せや腹筋をした。