"葬儀代10万円を拒んだ叔父――17年後、空の封筒を持って私は戻った" 第14話
12、けられなかった袋
女性の名は、64歳。健造の台帳にあった17件のうち、3番目に記されていた女性だった。
彼女は席へ着くと、12けることができなかった類袋のひもを解いた。からてきたのは、夫の入院費のために借りた300万円の契約、24枚の領収、そしてをけ渡したに撮った写真だった。
「2で270万円返しました。それでも、遅延をわせた残額は930万円だと言われたんです」
健造はと建物の価値を800万円と説し、反論の余を与えないまま所権を移した。しかし、押収された社内資料の査定は2400万円。半、そのは3100万円で売却されていた。
「夫がくなった、私はずっと自分を責めました。もっとく返せばよかった、契約を理解できなかった私が悪いと。でも昨、ニュースで500、420、2000という数字を見て、同じだと気づいたんです」
さんのは震えていた。それでも、24枚の領収を枚ずつテーブルへ並べた。「な老」ではなく、2、毎支払いを続けたの記録として。
写真ので、さんは何もなくなったに座っていた。すべての荷物を運びした、最に夫の位牌を胸に抱いたのものだという。撮刻は1842分。翌朝9に鍵を渡さなければ、1につき1万円を追加すると脅され、証拠を残すつもりで娘が撮った写真だった。
広告
さんが「鍵を渡したのは自分のだと言われ続けた」と話すと、内のシャッター音が消えた。声はさかったが、その沈黙のでは、どの記者の質問よりもはっきり聞こえた。
私はマイクを彼女のへ押しした。
「無理に話さなくても構いません。資料は鈴が預かり、警察と確認します」
「いいえ。今話さなければ、また自分が悪かったことにされてしまう」
さんがカメラの方へ体を向けると、記者席の番ろで、髪の男性がちがった。その隣の男性も、通帳をにしてった。鈴の事務所に、会見を見た別の契約者から話が入り始めていた。
その、スタッフが私の元で「佐藤直さんが到着しました」と告げた。
入にっていた直は、やつれた顔で、に緑のファイルを抱えていた。には18枚の振込細と、健造との通話を付ごとに記したノートが入っていた。
「父に保証を頼んだのは、私です。逃げずに全部話します」
直は、事業用の軽トラックを買うために500万円を借りたこと、当初は3で返せるとっていたことを話した。仕事が減って18か目に支払いが遅れると、健造から「父親ので簡単に返せる」と言われた。それからは、取りての話が昼夜を問わず続き、最で11分、同じ脅し文句を聞かされたもあった。
「父には、最初の契約しか見せていませんでした。2000万円になったことも、に押印させようとしていたことも、私はっていました。父を守れず、自分が責められるのが怖くて逃げたんです」
言い終えた直は、自分のを見つめたまま、く息を吐いた。佐藤さんがその配信を自宅で見ていると聞いても、便宜のいい言い訳はしなかった。
「お父さんに伝えたいことはありますか」
記者に聞かれ、直はようやくカメラを見た。
「今度は、謝るだけではなく、私がを守ります」
会見の配信に、たな証言がなった。その直、鈴の携帯話に、健造の会社で経理を担当する女性から着信があった。
「警察がまだ見つけていない原本を、私が持っています」