"葬儀代10万円を拒んだ叔父――17年後、空の封筒を持って私は戻った" 第12話
2000万円から158万円へ
私たちは佐藤の台所へ入った。古い油ストーブにをつけると、えた内に灯油の匂いが広がった。佐藤さんは湯を沸かそうとしたが、の震えが止まらない。私はやかんを受け取り、代わりに3分の茶を入れた。
鈴は濡れた契約の写真、直の振込記録、健造の会社から押収された返済表の速報値を並べ、計算を始めた。元は500万円。18かの入総額は420万円。違法な利息と根拠のない数料を除き、支払済みのを元へ充当すると、効な残額は概算で158万円だった。
鈴は、計算過程を佐藤さんにも見えるよう、1ずつ指で追った。420万円の入は、18枚の振込細と座の履歴が致している。毎の支払いのには、直が夜の配送仕事を増やして送ったもあった。それを健造の表向きの類では利息と数料へ充当し、元がほとんど減っていないように見せていた。
「2000万円ではないのですか」
佐藤さんが聞き返した。
「違います。しかも158万円は現点での暫定計算です。直さん名義のほかの振込が確認できれば、さらに減る能性があります」
私は用していた資から160万円を支払い続きへ回し、健造側が受領を拒んだは供託できるよう鈴に任せた。違法な2000万円を支払うのではない。正当な残額だけを処理し、佐藤さんを保証債務から解放するためだった。
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次に鈴は、産譲渡承諾をテーブルへ置いた。
「この類には佐藤さんの実印がなく、所権移転登記もされていません。さらに、催告の期限がだったため、昨の段階で処分禁止の仮処分を申してています」
彼女が話している途、携帯話に通が届いた。画面を確認した鈴が、初めてさく笑う。
「担保に必な供託続きも完し、仮処分命令がました。なくとも裁判所の判断を経ずに、このを移すことはできません」
佐藤さんはすぐには反応しなかった。湯みを両で包み、何度も同じ言葉をので繰り返している。
「取られない……このを、取られずに済むんだね」
「ええ。今から、実印を抱えて眠る必もありません」
佐藤さんは泣きながら、台所の柱に残る細い傷を指さした。直が学に入ったから、毎背丈を測って刻んだ印だという。妻を見送ったも、直の失業が続いたも、このだけは放さなかった。
「の値段は2800万円かもしれない。でも私にとっては、値段を付けられるものじゃない」
私は領いた。のさには価格を付け、いには値段を付けない。健造の帳簿が数えなかったものを、私たちはようやくつ守ることができた。
私が答えると、佐藤さんの目から涙が落ちた。17の私は、10万円によって母を置きりにせずに済んだ。
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今度は158万円の続きによって、佐藤さんが75きてきた所を守ることができた。
しかし、できたはく続かなかった。
夕方、会社の広報担当から私へ連絡が入った。健造の代理を名乗る弁護士が記者へ声を送り、記事が急速に広がっているという。
――企業社が、17の私怨から親族企業を陥れた疑い。
録音は誘導されたもので、警察への働きかけにも問題がある。健造側はそう主張し、私が2000万円を見せて自を引きしたことまで「違法な罠」として公表していた。
その声には、元500万円も、18かで420万円が支払われたこともかれていない。109%、11万円、1000万円、社内査定2800万円。自分たちに都の悪い数字だけを削り、「企業の社が老舗を攻撃した」という構図に塗り替えていた。
画面には、会社の代表番号へ入った問いわせがすでに63件と表示されている。
鈴が私を見た。
「このまま黙っていれば、被害者の方々まで嘘をついたと攻撃されます」
私は窓のの暗い庭を見つめ、母の菓子缶へを置いた。
「では、17から残っている数字を、全部公しましょう」