"葬儀代10万円を拒んだ叔父――17年後、空の封筒を持って私は戻った" 第10話
空になった10万円の封筒
私は茶い封筒を取りし、健造のへ掲げた。何度も触れた角はく擦れ、表面には佐藤さんが鉛でいた「1万円×10」という文字が残っている。
「1996の、母の葬儀代を貸してほしいと、私はあなたの敷で座しました」
音しか聞こえなかった庭が、さらに静かになった。
「あなたは10万円を拒み、私の顔を蹴った。そして、世のには奪う側と奪われる側しかいないと言った」
健造の唇がわずかにいた。
「……なのか」
「ええ。あの、のへ捨てた黒川です」
その名を聞いた途端、健造の線が私の眉ので止まった。子供の頃、倒れた塩ビ管で作った傷が、今もく残っている。彼の記憶にあった「みすぼらしい子供」と、目のでスーツを着ている男が、ようやくつに繋がったらしい。
背で子が鳴った。佐藤さんがちがろうとして、膝に力が入らず再び腰を落とした。私はすぐにそばへき、そのを握った。
「佐藤さん。黙って町をてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「君……本当に、君なのかい」
「あの10万円のおかげで、母を見送れました。18歳のに返そうとしたのですが、もおも転居先で戻ってきました」
私は鞄から、赤い返送印が残る封筒も取りした。佐藤さんは震える指で自分の名をなぞり、何度も私の顔を見直した。
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「きていてくれただけでよかった。こんなに派になって……」
佐藤さんのは、と血でたかった。あの、母の枕元で数えた10枚の幣はかかったのに、それを差ししたが今はこんなに痩せている。受けた恩を返すのに17かかったことが、スーツや肩よりく胸にのしかかった。
「派なんかではありません。あなたを見つけるのが遅すぎました」
「それでも、来てくれた」
その言で、私はようやく息を吐くことができた。
その言葉に胸が詰まったが、今は泣くではない。私は佐藤さんの肩へコートを掛け直し、健造へ向き直った。
「この切は、あなたの違法な請求を満たすための2000万円ではありません。佐藤さんの正当な債務を処理し、活を守るために用した資です」
「待て。おは勘違いしている」
健造は急に声をめた。
「昔のことは、内同士のき違いだ。おの母親にも返済の遅れがあった。今さら族で争って何になる」
「母は族だから助けてくれと頼んだのではありません。借りた10万円は働いて返すと言いました。それすら拒んだのは、あなたです」
私は菓子缶から持ちした借用の写しを鈴へ渡した。母の返済、健造の会社印、い評価額で移された旧宅。その形式は、佐藤さんのに置かれた類とよく似ていた。
「母の類だけなら、古い族の争いで終わったかもしれません。
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しかし、同じ形式の契約がなくとも17件残っている。あなたは17、何も変わらなかった」
「証拠になるものか。昔のと録音だけで、俺の会社を潰せるとうな」
「潰すことが目ではありません」
私は切をケースへ戻した。
「払うべき額は払う。返すべきは返す。そので、誰が、いつ、いくら奪ったのかをらかにします。数字を曖昧にしたまま、復讐と呼ばせるつもりはありません」
産鑑定士が静かに領き、たな資料袋をいた。そこには佐藤のだけでなく、過6件の登記と取引価格の比較表が入っていた。健造の線は、表に並んだ15個の額のをせわしなく往復した。
健造が吐き捨てた、田刑事の携帯話が鳴った。く応答した彼は、画面を確認してから健造を見た。
「会社事務所の捜索を始しました。鍵のかかった保管庫から、別管理の台帳が見つかったそうです」
健造の目がきく見かれた。
「そんな台帳はらない」
田刑事は通話を切り、静かに告げた。
「では、署で詳しく説していただきましょう」