"葬儀代10万円を拒んだ叔父――17年後、空の封筒を持って私は戻った" 第5話
に伏す恩
翌朝、私は社用で故郷へ向かった。鈴には現で流すると伝え、田刑事にも佐藤さんの所を共した。健造の会社に対する捜査はすでにいていたが、佐藤さんが今どんな状態にあるのかだけは、資料から読み取れなかった。
速をりると、17にはでにぎわっていた商が見えた。肉はシャッターをろし、文具だった建物には「売物件」のが貼られている。閉したの登記をたどると、そのうち3軒が健造の会社を経由して別の所者へ移っていた。
助席には、鈴がまとめた佐藤の資料を置いていた。息子の直が借りたのは500万円なのに、最の催告は2000万円。しかも、産譲渡の期限はになっている。偶然もう1遅れていたら、佐藤さんのは類のでも奪われていたかもしれない。
「このので止めてください」
運転をに残し、私はで歩いた。佐藤さんの所は、母と暮らしたアパートから数百メートルしかれていない。古いブロック塀や細い側溝には記憶があったが、あのアパートは駐に変わっていた。
返送されたをすぐに届けられなかった17が、急にく胸へ戻ってきた。成功してから会えばいいと考えた自分への悔もあった。もし佐藤さんがすでに取り返しのつかない状態だったら、私は、自分を許せないだろう。
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角を曲がった先に、青い瓦の古い平が見えた。壁にはひびが入り、根の部は青いシートで覆われている。表札の「佐藤」という文字を確認した瞬、庭から男の鳴り声が聞こえた。
「今こそ判を押せ。息子の借を代わりに払うと言っただろう」
私は塀のでを止め、スマートフォンの録音を始した。
庭の央で、の老がのに膝をついていた。いジャンパーの背はで濡れ、両は震えている。そのには価そうなコートの男と、類鞄を持った若い男がっていた。
玄関脇には、具を運びすためなのか、赤い印をつけた段ボールまで積まれていた。若い男はの窓や柱をスマートフォンで撮している。まだ所権は移っていないのに、健造たちはすでに自分たちの物として扱っていた。
「もうし待ってください。直とはまだ連絡が取れないんです。私のだけでは2000万円なんて……」
老が顔をげた。い皺と髪で別のように老いていたが、声を聞き違えるはずはなかった。
佐藤さんだった。
私は駆け寄りそうになる体を押さえ、鈴へいメッセージを送った。
――本を確認。現、複数による威迫為あり。位置報を共します。
コートの男は分い類を振り、佐藤さんの目のへ突きつけた。
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「元は500万円でも、利息と遅延をせば2000万円だ。払えないなら、このとを1000万円で引き取ってやる。残りの1000万円はから返せ」
「そんな話は聞いていません。このまで渡したら、私はどこで暮らせば……」
「息子の保証になったおが悪い。貧乏は黙って、持っているに従えばいいんだ」
その言葉と同に、男の革靴が佐藤さんの肩を押した。老の両がへ沈み、濁ったが袖へ染み込んでいく。
17、私をのへ蹴り倒した声だった。
男が横を向き、私はその顔を見た。頬はたるみ、髪にはいものが混じっていたが、を見ろす細い目だけは変わっていない。
黒川健造。
あの、母の葬儀代として頼んだ10万円を拒み、15歳の私を蹴った叔父が、今度は私の恩を同じのに沈めていた。
私は胸ポケットの茶い封筒に触れ、ゆっくりと佐藤のを押しけた。