みかん小説
本棚

"四十二歳の妊婦を捨てた機長と二十年後の息子" 第8話

「あの藤崎蓮だろ?」

「あのエースパイロットが……」

誰もがっている名

蓮はすでに優秀なパイロットとして名を馳せており、数々の功績を残していた。

その名をらぬ者はいない。

翔の唇が震え、声にならない言葉を漏らした。

「お、お……もしかして……」

蓮はゆっくりと翔のに歩み寄り、すっと背筋を伸ばして言い放つ。

「藤崎翔さん。あなたの息子です」

翔は言葉を失い、ずさりした。

「……」

蓮はたい線で翔を見据えた。

「あなたのようなが父で、底がっかりしました」

翔は顔を真っ青にし、震える声で尋ねた。

「ほ、本当にあの、美咲のお腹にいた子供か……」

声が震えている。

「あ、ああ、冗談だろう。嘘をつくかよ、こんなこと」

翔は、その言葉を言った瞬、はっきりと気づいたのだろう。

目のにいる青は、自分が捨てたさな子供ではない。

彼は母にされ、誠に支えられ、1派な男に成した。

親の力など必としない、自分の力で未来を掴んだい男だった。

翔は慌てて言い訳を始めた。

「違う、あのは若気の至りというか……」

私はて、翔を睨みつけた。

「あなたの若気の至りのせいで、私は蓮を1で育てたわ」

私は彼の罪をはっきりとにした。

「あなたが養育費すら払わずに、私たちを捨てたせいでね」

翔は顔を歪めた。

「な……」

言葉に詰まり、何かを言い返そうとしたそのだった。

広告

翔が逆したように、私の肩を掴もうとを伸ばした、その瞬

「バチン」

蓮が素く私のち、翔の腕をく弾きばした。

「やめろ」

翔は腕を押さえ、ずさった。

「な、なんだよ……蓮」

翔の目が見かれる。

かつては自分よりさく々しかったはずの息子が、今や堂々と自分を見ろしている。

その威圧に、翔のがわずかに震えた。

そしてさらに、そのにもう1の男が現れた。

佐々誠。

かつて警察官だった誠は定を迎えたが、今もその鋭いを失っていない。

彼は翔のち塞がり、い声で警告した。

「いい加減にしろ。暴罪で捕まりたいのか」

く響く声に、翔がビクリと肩を震わせる。

「ちっ……」

もはや反論の余もないと悟ったのか。

翔は苦々しい顔をしながらずさった。

誠は翔を睨みつけ、たく言い放った。

「おがどう言い訳しようが、美咲と蓮にはもう関係ない」

私は誠の隣に並び、く頷いた。

「ええ、そうね」

翔は唇を噛み締めながらも、もはや何も言えなかった。

その瞬、私たちは彼と完全に決別したのだ。

空港をにする、蓮がふと私のを握った。

「お母さん、今までありがとう」

私は蓮の顔を見た。

「蓮……」

蓮は私のく握り返した。

「お母さんが支えてくれたから、今の僕がある」

真っ直ぐな瞳が、私を見つめている。

蓮の瞳には迷いがなく、志が宿っていた。

広告

何度もが折れそうになったこともある。

それでも蓮のために踏みとどまり、ここまで歩んできた。

その全てが無駄ではなかったのだと、彼の言葉がそう証してくれた。

私は涙をこらえ、ゆっくりと微笑む。

「……」

私は涙が溢れそうになったが、こらえて微笑んだ。

「あなたは私の誇りよ。これからも派な翼を持って空を駆けなさい」

蓮は力く頷いた。

「うん」

誠が運転席からバックミラー越しに私を見て、さく頷く。

空港で翔と決別してから数週、私たちは再び彼の名をにすることになる。

だがそれは、名誉なニュースとしてだった。

ある、蓮が仕事から帰宅すると、番に私に言った。

「お母さん、ニュース見た?」

私はキッチンから顔をした。

「ニュース?」

蓮はテレビのリモコンを取りながら言った。

「父さんが航空会社を解雇された」

私は驚き、蓮が指差すテレビ画面を見つめる。

そこにはあるニュースが報されていた。

航空会社で適切言の内部告発』

『元の藤崎翔氏、複数のCAから告発される』

私は画面を見つめ、瞬、息を呑んだ。

「やっぱり……」

私はっていた。

翔が昔から女性を軽し、若いCAに言い寄るような男だったことを。

「ついにるみにたのね」

蓮はテレビ画面を見つめながら言った。

「どうやら複数のCAが被害を受けていたみたいだよ」

蓮は嫌悪を隠さずに続けた。

「若いCAに無理やり関係をしたり、拒否すると配置転換を匂わせたり。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: