"愛人とタイへ行った夫の10日後" 第5話
斎で見つけたものを全て話した。
美穂という女性。
タイ旅。
父が残した1500万円。
別座。
マンション。
婚届。
そしてピンクの便箋。
話の向こうで、健が息をんだ。
「何だよ、それ……」
しばらくして、りに震える声が聞こえた。
「父さん、おかしいんじゃないのか。母さんが3どれだけおばあちゃんの介護してきたとってるんだよ」
私は何も答えられなかった。
「母さん、もういいよ」
健が言った。
「その、今すぐなよ」
「今、ようとってたの」
「俺のところに来る?」
「ありがとう。でも健に迷惑はかけたくないわ。実へこうとう」
「実って、おじいちゃんたちの?」
「ええ」
父のとの部は、くなったに売却していた。
けれど、私が育ったさな平だけは古すぎて買いがつかず、そのまま残っている。
と気だけは、いつでも入れができるよう基本料を払い続けていた。
「分かった。まずそこへって」
健はほっとしたようだった。
「俺、今週末にはそっちへく」
「でも仕事が」
「母さん、それともう1つ」
健は私の言葉を遮った。
「学代の親友が弁護士をやってる。婚とか財産の問題をかなり扱ってるんだ。事を話して相談する」
私は驚いた。
「そんなげさにしなくても」
「げさじゃない」
健の声がくなった。
「母さんは28も族を守った。
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今度は俺が母さんを守る番だから」
その瞬だった。
28、私の胸ので張りつめ続けていた糸が、静かに切れた。
私はずっと恐れていた。
婚したら健がかわいそうなのではないか。
息子が結婚する、親が婚していたら肩の狭いいをするのではないか。
だからしよう。
庭を壊してはいけない。
そう自分へ言い聞かせ続けてきた。
けれど、その息子本がもうになり、私へ言った。
自分のためにきてほしい、と。
「ありがとう、健」
気づけば涙が流れていた。
「お母さん、もう泣かないわ」
私はボストンバッグを閉めた。
義母の部の枕元には、部へ連絡できる携帯話がある。ケアマネージャーの連絡先も、浩司の番号も登録されている。
今すぐていけと言ったのは、義母自だった。
私はへ戻らなかった。
玄関で靴を履き、ボストンバッグを肩にかけた。
「由美! 何してるの! お茶は?」
鳴り声が聞こえた。
私は玄関のドアをけた。
のが頬に触れた。
28暮らした。
健が幼い頃につけた柱の傷も、婚代に選んだカーテンも、このには私のが詰まっている。
それでも、そのの私には未練がなかった。
静かにドアを閉めた。
鍵の音がした。
その瞬、肩からい荷物が落ちたような気がした。
翌朝。
私は実の古い平で目を覚ました。
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呼び鈴の音がない。
義母の鳴り声もない。
朝5にび起きなくてもいい。
ただそれだけのことが、信じられないほど贅沢だった。
カーテンをけると、入れされていない庭に朝が差していた。
仏壇のに座り、線を1本てた。
父と母の写真が並んでいる。
「お父さん、お母さん。ごめんなさい」
私はをわせた。
「2が残してくれたお、守れなかったかもしれない」
涙が筋流れた。
「でも、このままでは終わらせないから。私、自分のを取り戻すから」
そのの午。
健がで実へ来た。
そして隣には、スーツ姿の男性がいた。
「母さん、紹介する。学代からの友達で、弁護士をしている林」
林弁護士は30代半ばの落ち着いた男性だった。
古びた座布団へ座ると、まず私へくをげた。
「由美さん。健から事を伺いました。い、本当に変でしたね」
私は言葉がなかった。
「ですが、もう1で抱えなくて丈夫です」
その言を聞いただけで、胸の奥がし緩んだ。
私はスマートフォンを取りした。
そして、斎で撮した全ての証拠を林弁護士へ見せた。
林弁護士は写真を1枚ずつ確認した。
浩司名義の別座。
美穂への送。
築マンションのパンフレット。
婚届。
ピンクの便箋。
私の父が残した遺産が減っていく記録。
優しそうだった林弁護士の目が、次第に鋭くなっていった。
「かなり悪質ですね」
写真を見終えると、林弁護士は静かに言った。
「なくとも、ご主が期にわたって由美さんへ隠して財産をかしていたことは分かります。