"帰国したら、夫に双子がいた" 第4話
私を見るとすぐにちがったが、私は挨拶をせず向かいの席へ座った。
「話したいことがあるんでしょう」
奈は目を伏せたまま、さく息を吸った。「こんなふうになりたかったわけじゃないの」と言った。私は彼女が続きを話すのを待った。
「千里と敵みたいになるなんてってなかった。私、ずっとあなたが好きだったし、今でも切な友達だとってる」
私はわず彼女の顔を見た。自分の親友の夫と関係を持ち、その子供を妊娠したと告げながら、まだ友という言葉を使えることに驚いた。
「奈。あなたにとって友達って、何?」
彼女の目に涙が浮かんだ。「責められて当然だとってる。でも赤ちゃんたちは何も悪くないでしょう」と言いながら、お腹へを添えた。その言葉だけは空港でも聞いた。
「子供を責めたことは度もないわ」
「だったら、しだけ考えてほしいの。修平をすぐに婚で追い詰めないで。子供がまれるまでは今のままでいてくれたら……」
私はを疑った。「今のまま」というのは、私が戸籍の妻であり続け、そのに修平が彼女の産へち会う状態をするのだろう。奈はそれを自分に都の良い「穏便な解決」だと考えているらしかった。
「どうして私があなたの産のために結婚を続けるの?」
奈は泣きながら首を振った。
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「私のためじゃない。修平の仕事のためでもあるの。今婚の話が広がったら会社に響がるかもしれないでしょう。千里だって、あのプロジェクトを潰したくはないはずよ」
その瞬、私は完全に理解した。
彼女は私の気持ちをっているのではない。私の責任をっているのだ。自分を傷つけられても会社や周囲へ迷惑をかけることを嫌い、最には私がみ込むだろうと計算している。
「修平から聞いたの?」
奈は瞬だけ黙った。
「何を?」
「プロジェクトの権限を私が持っていること」
彼女の線がわずかに揺れた。その反応で分だった。
「やっぱり聞いてるのね」
「違うの。修平が配してたから……」
私はスマートフォンをテーブルのへ置いた。録音能はすでにかしていたが、彼女には何も言わなかった。
「それよりつ確認したいことがあるの。双子は本当に修平の子?」
奈の表が固まった。
次の瞬、彼女の目から涙が溢れた。「どうしてそんなひどいことを言うの?」と声を震わせ、両で腹部を包んだ。私は謝らず、もう度だけ尋ねた。
「修平の子なら、に親子鑑定をしても問題ないわね」
奈は唇を噛んだ。「どうしてそんなことまでしなきゃいけないの。しているから疑われるなんて耐えられない」と言った。私は彼女が「危険だから」
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と答えるのではなく、「疑われることが耐えられない」と理由をすり替えたことを覚えておいた。
「修平はっているの? 私が疑っていること」
「らないわ」
「じゃあ伝えておいて」
奈は私を見たまま黙っていた。
私は昔の彼女をいしていた。学代、奈には同期に好を寄せていた男性が2いたことがある。には「あなたしかいない」と言い、もうには「まだ付きっていないから裏切りじゃない」と説していた。
そのも彼女は泣いた。私は泣いているには事があるのだろうとい、彼女を庇った。けれど今になってみれば、涙を流すことと誠実であることには何の関係もなかった。
「千里、昔のあなたはこんなじゃなかった」
奈は私を責めるように言った。
「昔の私はどんなだった?」
「優しかった。私が困った、いつも助けてくれたでしょう。何があっても方だって言ってくれた」
私は静かに頷いた。学ローンの返済に困ったも、就職先が見つからなかったも、母親の術代がりなかったも、私はできる範囲で彼女を助けてきた。奈が泣くたびに、本当に追い詰められているのだと信じた。
しかし、その初めて分かった。
奈にはがなかったのではない。
自分のが苦しくなると、のを使うことに慣れていただけだった。
「あなたに渡したおのこと、覚えてる?」
奈の指が止まった。
「もちろん。ちゃんと返すつもりだった」
「修平からもおを受け取っていたのね」