"ソファの下のピンクのスマホ" 第1話
息子のへ掃除を伝いにったのは、6の蒸し暑い曜だった。
「お義母さん、本当にすみません。最ちょっと忙しくて、掃除までが回らなくて」
そう言って玄関で私を迎えたのは、息子・雄の妻である優奈さんだった。いベージュのワンピースにい髪をゆるくまとめ、いつものようにじのいい笑顔を浮かべていた。
私は幸子、58歳。夫をくにくし、息子の雄をで育ててきた。
雄は33歳になり、5に優奈さんと結婚した。決して裕福とは言えないけれど、真面目に働き、さなIT関連会社を友とちげている。
結婚してからも、雄は私に音を吐かなかった。
取りはに30万円ほどだと聞いている。そのうち15万円ほどを活費として優奈さんへ渡し、残りから宅ローンや費、保険料を払っていた。
自分のは滅に買わず、昼も会社くのい弁当で済ませている。それでも優奈さんがバッグを欲しいと言えば買い、旅へきたいと言えば休みを調して付きっていた。
私はそんな息子をし配しながらも、夫婦には夫婦の暮らし方があるとい、をさないようにしてきた。
そのも、雄は休勤だった。
「お義母さん、そこまでやっていただかなくても丈夫ですよ」
「いいのよ。にいても暇なんだから」
広告
私はそう笑って、掃除をかけ、棚の埃を拭き、最にリビングのをモップで拭き始めた。
優奈さんはキッチンで昼を作っていた。
トントントン、と包丁の軽い音が続く。
私はソファの周りを拭いていたが、柄のいモップを具に引っかけ、うっかりから落としてしまった。
モップの先端が、そのままソファのへ滑り込んだ。
「あら……」
しゃがみ込み、暗い隙へを伸ばした。
指先にモップではないいものが触れた。
たく、平らだった。
雄のスマートフォンでも落ちているのだろうとい、そのままへ引き寄せた。
てきたのは、見覚えのないスマートフォンだった。
ピンクのカバー。
周囲にはさなラインストーンが貼られている。
なくとも雄の物ではない。
その瞬だった。
画面が突然るくなった。
通が届いたらしい。
私は反射に画面を見た。
そして、けなくなった。
待ち受け画面には、組の男女が写っていた。
若い女性が男性の胸へ体を預け、幸せそうに目を細めている。男性は彼女の肩を抱き、額へづけていた。
女性の顔を、私が見違えるはずがなかった。
優奈さんだった。
だが。
彼女を抱いている男は、雄ではなかった。
私はソファのにしゃがんだまま、息の仕方さえ忘れていた。
窓のではに揺れたの葉が擦れる音がしている。
広告
キッチンからは包丁の音が続いているのに、自分の周囲だけが止まってしまったようだった。
見違い。
そうであってほしかった。
古い写真かもしれない。
結婚の恋かもしれない。
そう自分へ言い聞かせようとした。
しかし、写真の優奈さんがにつけているい腕計には見覚えがあった。の誕に雄がプレゼントしたものだ。
つまり、結婚の写真である。
が震え、スマートフォンが指から滑った。
さな音をてて再びソファのへ転がっていった。
その、キッチンから優奈さんの声が聞こえた。
「もう。そんな嬉しいことばっかり言って」
話をしているらしい。
だが、私はさらに凍りついた。
普段の彼女とはまるで違う声だった。
甘く、柔らかく、恋へ話しかけるような声。
「私だって会いたいわよ」
私はちがり、何も聞いていないふりをしてテレビ台を拭いた。
胸の奥では臓が激しく打っている。
「雄は今遅いから丈夫。うん……分かってる」
しばらく沈黙したあと、優奈さんはさく笑った。
「あなたに任せるわ」
私は持っていた雑巾を落としそうになった。
あなた。
妻が夫以の男へ使うには、あまりにも親密な響きだった。
数分、話を切った優奈さんがリビングへ戻ってきた。
「あ、お義母さん。ずっと掃除してくださってたんですか? 言ってくださればお茶を入れたのに」
「平気よ」
私は無理に笑った。
「雄も今は遅いんでしょう。