"27年後、娘は父の葬儀に帰ってきた" 第1話
1995417、千葉県の宅には、朝からいがっていた。桜はほとんど散っていたが、学の通学には濡れたびらが貼りつき、子どもたちはしい学の名札を胸につけて歩いていた。
美穂は学5になったばかりの10歳だった。母の佐子は朝を片づけながら、赤いランドセルを背負った娘の髪をえた。
「今は学まで迎えにくから、ので待っていてね」
「本当に来る?」
「本当よ。帰りに駅でケーキをべよう」
美穂は何度もを押した。佐子はで裁の内職をしており、納期になると約束のに遅れることがあったからだ。
「苺のショートケーキがいい」
「分かってる。いつものおでしょう?」
美穂は満そうに頷き、玄関をていった。赤いランドセルの横には、佐子が縫った黄い巾着袋が揺れていた。
それが、佐子が見た娘の最の姿になった。
午2をし過ぎた頃、夫の正から話が入った。正は宅設備会社「設」を経営しており、そのは内の事務所にいるはずだった。
「階段でを滑らせた。腰を打ってけないんだ。悪いけど、薬と保険証を持ってきてくれないか」
「救急を呼んだ方がいいんじゃない?」
「そこまでじゃない。社員にも格好悪いところを見られたくないから、く来てくれ」
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佐子は学へ話し、美穂に「今は迎えがし遅れる」と伝えてもらおうとした。しかし職員は授業の会議で、話にた事務員は、担任へ伝えておくと答えただけだった。
佐子は薬と保険証を鞄へ入れ、急いで正の会社へ向かった。ところが事務所へ着くと、正は普段どおり子に座っていた。
「腰は?」
「もう丈夫だ。し休んだらけた」
「だったら話してよ。美穂を迎えにく約束をしていたのに」
正は机のの類をえながら、悪びれずに笑った。
「10歳なんだから、1で帰れるだろう」
佐子が会社をたには午3を過ぎていた。学まで急いだが、にも昇にも美穂はいなかった。
担任の教師は、母親が迎えに来るとは聞いていないと答えた。佐子からの伝言も、会議の慌ただしさので伝わっていなかった。
美穂と同じ方向へ帰る同級を捜すと、1の女が議な話をした。
「美穂ちゃん、女のと緒にったよ」
「どんな?」
「のを着てた。お母さんが事故に遭ったから、病院へ連れていくって言ってた」
美穂は驚いたものの、女をらない様子ではなかった。女によれば、美穂は相を「理恵おばさん」と呼んでいた。
佐子には、理恵という親戚はいなかった。
女は美穂の黄い巾着袋を持ち、くに止めてあったいセダンへ乗せた。
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は学の細いから、国方面へりったという。
佐子は学の話から警察へ連絡した。正も駆けつけ、最初は妻を責めた。
「迎えにくと言ったのはおだろう。どうして会社なんかに来たんだ」
「あなたが呼んだんでしょう?」
「俺は、そこまで急いで来いとは言ってない」
正は鳴ったあと、廊の壁へをつき、突然泣き始めた。教師たちは娘を配する父親を気遣い、佐子にはたい線を向けた。
そのの夜から、美穂の捜索が始まった。駅、商、公園、川敷が調べられ、いセダンについても目撃報が集められた。
しかし、のナンバーを覚えているはいなかった。
正は美穂の写真を数百枚印刷し、駅や先で配った。聞社やテレビ局にも連絡し、娘を捜してほしいと訴えた。
「美穂、っていないから帰ってきてくれ。お父さんもお母さんも待っている」
報カメラので呼びかける正の隣に、佐子もった。だが彼女は、自分の肩を抱く夫のがしも震えていないことに気づいていた。
美穂が消えて1週、佐子は夫の会社の写真を理していた。そのに、のスーツを着た女性が写っていた。
設の社員旅で撮された集写真だった。正のすぐろにつ女性の名は、川理恵。
かつて会社の経理を担当していたが、美穂が失踪する2かに退職したと正は説した。
「美穂は、このをっているの?」