"消えた母と2800万円" 第9話
計簿が23返却されなかった理由を調べると、当の捜査主任が片瀬建設の元顧問として再就職していたことも分かった。捜査段階から、複数のが事件を盗難と自主失踪に見せかけていた。
田、松永、佳代、俊の証言。そして12冊の通帳、計簿、沢の帳。
断片だった報が、つの資の流れとしてつながり始めた。
黒沢は再度事聴取を受けた。最初は記憶がないと繰り返したが、計簿と沢の帳を示されると、佳代から話を受けたことを認めた。
「私は、事実確認のため支へ連絡しただけです」
「その結果、佳代さんは連れられました」
「そこまでは予していなかった」
黒沢は最まで、自分は直接命令していないと主張した。
だが、彼の自宅から保管されていた古いカセットテープが見つかった。19981226、沢との話を自ら録音したものだった。
黒沢は、将来沢だけに責任を負わせるため、密かに会話を残していた。
テープので、沢はこう話していた。
《宮本は岡へ送った。もう戻らない》
黒沢は答えていた。
《娘がいる限り、戻れないだろう》
再調査の結果、1998に2800万円の現が盗まれた事実はなかったと正式に確認された。3件の良融資を現へ組み替え、佳代が持ちしたように見せかけていたのである。
信用庫は記者会見をき、当の内部調査にな誤りがあったと発表した。
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佳代への懲戒処分を取り消し、盗難への関与を示す記録も訂正すると説した。
理事だった黒沢は辞任した。関係者の部はすでにくなり、の経過によって法責任を問うことが難しい為もあったが、現する資料を隠していた経緯や、現まで続いていた虚偽説について調査がめられた。
片瀬建設はすでに別会社へ吸収されていた。しかし当の経理責任者と元運転がしており、佳代を計へ連れていった事実を認めた。
佳代が帰ろうとすれば娘に危害を加えると告げたことも、複数の証言で裏づけられた。
俊は警察で、資料の焼却、印鑑の引き渡し、原への偽装について証言した。借を免除された記録も残っており、単に脅されただけではなく、自分の会社を守るために協力した面があったことを認めた。
「奈緒だけは巻き込みたくなかった」
事聴取を終えた俊は、娘にそう話した。
奈緒は首を横に振った。
「私は最初から巻き込まれていたよ。お母さんを失って、棒の娘と呼ばれて、23何もらされなかった」
俊は反論できなかった。
「守るというのは、本から真実を奪うことじゃない。お父さんは私を守ったんじゃなく、自分がしたことを見られないようにしただけ」
奈緒は父との連絡をしばらく絶つと告げた。
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絶縁すると決めたわけではなかったが、父が謝罪したからといって、すぐ元の関係に戻ることはできなかった。
佳代は体調が落ち着いたあと、23ぶりに松代へ戻った。信用庫の応接で、処分取り消しの面と謝罪文を受け取った。
職員はくをげたが、佳代は面を何度も確認し、訂正を求めた。
《元職員・宮本佳代氏が持ちしたとされた現について》
その表現では、佳代が持ちした能性を残している。
「私は現を持ちしていません。疑われたのではなく、盗んだことにされたんです」
信用庫は文面をき直した。
《宮本佳代氏による現持ちしの事実はなく、当の関係者が虚偽のを作りした》
佳代はようやく署名した。
それは23に奪われた名を、取り戻すための署名だった。
会見、元輩の田が佳代を訪ねてきた。彼は現確認表へ虚偽の数字をいたことを謝罪し、ずっと訂正できなかった自分のさを認めた。
佳代はすぐに許すとは言わなかった。
「あなたも、沢支が怖かったんでしょう。でも、私も怖かった。怖かったから何もできなかったと言えば、全部同じになってしまう」
田は黙ってをげた。
「これから何を話すかで、しずつ責任を取ってください」
佳代自も同じだった。被害者だったことは、娘へ連絡しなかったまで正当化しない。