"消えた母と2800万円" 第8話
翌、奈緒は再び施設を訪ねた。
「すぐには許せない」
佳代は静かに頷いた。
「分かっています」
「会いたかった。でも、会えたから全部終わりにはできない」
「終わらせなくていい」
佳代は娘をまっすぐ見た。
「今度は、途からでも話したい」
奈緒は、母の言葉を受け入れるとも拒むとも言わなかった。代わりに、1998の事件について詳しく聞かせてほしいと頼んだ。
佳代は鉄製の箱に入っていた12座のうち、特に3座を点に調べていた。そこには片瀬建設へ流れただけでなく、当の沢支個の購入資も含まれていた。
佳代は原始伝票を持ちす、受付番号と額を自宅の計簿へき写していた。俊へ包を託すことにをじ、別の所にも記録を残していたのである。
「その計簿は、警察が持っていったはずです」
奈緒は当の押収品覧をいした。計簿も確かに含まれていた。
しかし返却された遺留品に、1998分の計簿は入っていなかった。
佳代はさらに、失踪当の午7頃、信用庫の部監査担当者へ話していた。資料を駅の喫茶で渡す予定だったが、相は現れなかった。
「監査のの名は?」
「黒沢英治さん」
奈緒はその名をっていた。
黒沢は現、信州みなみ信用庫の理事を務めていた。佳代の名誉回復について問いわせた際、古い資料がないと回答した物である。
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23、佳代から正の報告を受けるはずだった男が、今は信用庫の頂点にっていた。
奈緒は黒沢へ面会を申し入れた。佳代がきていることは伏せ、1998の部監査記録について質問したいとだけ伝えた。
黒沢は本の応接で奈緒を迎えた。70歳くになっていたが、背筋は伸び、言葉遣いにも隙がなかった。
「宮本佳代さんの件は、当庫にとっても残な来事でした」
「母は現を扱う権限を持っていませんでした。2800万円のも実際にはなかった。ごじですよね?」
黒沢は表を変えなかった。
「当の調査は警察と内部委員会がっています。今の記録だけで、過の判断を否定することはできません」
奈緒は、佳代が午7に話したことを伝えた。
黒沢は数秒黙ったあと、記憶にないと答えた。
「では、母と午8に駅喫茶で会う約束もしていませんか?」
「していません」
「母はあなたの名を覚えています」
「方だった方が突然現れ、23の記憶を語っているのですか?」
奈緒はその言で、黒沢が佳代のをっていたと確信した。こちらは母が見つかったとは度も言っていない。
「なぜ、母が現れたとったんですか?」
黒沢の目がわずかにいた。
そのではそれ以答えを得られなかった。しかし面会、黒沢が沢支へ話していた記録が残っている能性がてきた。
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1998当、携帯話の通話記録そのものは保されていなかったが、沢の個帳が遺族宅に残されていた。1225の欄には、午711分に《K・監査》から話とかれていた。
その直、《宮本、資料持し》《片瀬へ連絡》という記載があった。
黒沢は佳代から相談を受けながら、沢へ報を流していた。
彼は当、部監査担当者ではなく、本部検査部の職員だった。正をらかにするにいながら、沢とともに帳簿操作へ関与していたのである。
理由は昇だった。片瀬建設の関連会社へ融資を続ければ、支の貸実績は伸びる。表面の成績を作り、損失がるに休眠座を使って穴を隠していた。
佳代は黒沢を信頼し、最も危険な相へ自分のをらせてしまった。
警察は当の押収品を再確認した。証拠保管庫の奥から、返却されていなかった1998の計簿が見つかった。
計簿の料理や用品の記録に混じって、数字と記号がかれていた。
《K12-417 500》
《N03-821 1200》
《M07-166 600》
それぞれ、架空融資の受付番号と額だった。鉄製の箱に入っていた通帳の取引記録と致した。
さらに計簿の最終ページには、佳代の跡でこうかれていた。
《2800は現ではない。3件の貸倒処理》
《田さんは命令されただけ》
《黒沢さんにも話した。もし私に何かあれば、本部が調べてくれるはず》
佳代は最まで黒沢を信じていた。