"消えた母と2800万円" 第7話
《あなたが来なかったのは、会いたくないからだと聞きました》
《当然だといます。私はあなたを置いて逃げた母親に見えるでしょう》
《それでも、あののことを度だけ説したいとっています》
を追うごとに文章はくなり、最のは2018にかれていた。
《奈緒へ。もう謝る資格もないとっています。でも、あなたがきていてくれることだけを願っています》
奈緒は便箋を元に戻した。
母は娘を忘れていなかった。しかし、忘れていなかったことと、23会いに来なかったことは別だった。
「どうして、澄さんはをすよう勧めなかったんですか?」
「何度も言いました。でも佳代さんは、娘さんが自分を拒んだとい込んでいました。2004に駅で待っても来なかったことが、最まで消えなかったんです」
俊は佳代に、奈緒が盗みの事実をり、母親とは度と会いたくないと言っていると伝えていた。佳代はそれを信じた。
方、奈緒には、母から度も連絡がないと言い続けた。
父は母娘のにち、それぞれへ別の嘘を伝えていた。
「佳代さんに会いますか?」
澄に尋ねられ、奈緒はすぐに答えられなかった。23願い続けた瞬がづいているのに、がかなかった。
療養施設へ向かうので、奈緒は何度も母の写真を見た。失踪当38歳だった佳代は、いブラウスを着て穏やかに笑っていた。
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施設の面会へ入ってきた女性は、写真よりずっとさく見えた。髪の半はく、杖をつき、職員に支えられて歩いていた。
佳代は奈緒の顔を見ても、すぐにはづかなかった。
「奈緒?」
その声だけは、23と変わっていなかった。
奈緒はテーブルを挟んだまま頷いた。佳代は何か言おうとしたが、唇が震え、言葉にならなかった。
い沈黙のあと、佳代が尋ねた。
「クリームシチュー、今でも好き?」
奈緒の目から涙がこぼれた。
しかし、母の胸へび込むことはできなかった。
「どうして帰ってこなかったの?」
佳代は目を伏せた。
「最初は、あなたを守るためだった」
その言葉を聞いた瞬、奈緒の涙が止まった。
「お父さんも、同じことを言った」
奈緒は母との最初の面会を、30分で終えた。佳代は引き止めず、帰り際に何度もをげた。
その夜、奈緒は見荘に泊まった。の積もった庭を見ながら、澄が用した夕にもほとんどをつけられなかった。
母がきていたびは確かにあった。しかし同に、母もまた23、自分で沈黙を選んでいたという事実がく残った。
翌、佳代からが届いた。面会では話せなかったことを、隠さずくと記されていた。
佳代は岡駅で松永と別れたあと、女性支援団体の助けを借り、潟県内の民宿を転々とした。警察へくことも考えたが、原始伝票は俊へ預けたとっており、自分の言葉だけでは沢や片瀬に対抗できないと考えた。
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聞では、佳代が2800万円を持ち逃げしたと報じられていた。すれば逮捕され、奈緒のそばへ戻るどころか、犯罪者として扱われる能性があった。
それでも、最初の数は娘が成したら必ず会うつもりだった。片瀬の響力がまり、奈緒が父親かられれば、真相を話せると考えていた。
2004、佳代はようやく松代へ戻った。駅ので3待ったが、奈緒は来なかった。
俊は話で、奈緒が自分ので会わなかったと告げた。
《おが盗んだのせいで、あの子は学でどれだけ苦しんだとう。今さら母親の顔をするな》
佳代は、その言葉を信じた。
だが、そのも連絡する方法はあった。を別の所へ送ることも、奈緒の学へ問いわせることもできた。
佳代はの最で認めていた。
《脅されていたのは最初の数です。そののい、私はあなたに拒まれることから逃げていました》
《守るためという言葉を使えば、自分のさを見なくて済みました》
《あなたを守ったのではありません。私は、自分が母親として失敗したとることを怖がっていました》
奈緒はその文を何度も読んだ。
父は自分の裏切りを隠すため、母は自分の恐怖から逃げるため、どちらも「娘を守る」という言葉を使っていた。