"消えた母と2800万円" 第2話
3、の残る千曲川の原で、佳代の靴と赤い囲巾が見つかった。
発見者は、夫の俊だった。
佳代の失踪は、けとともにきく報された。信用庫から2800万円を持ちした女性員が、族を残して姿を消したと伝えられた。
警察は川や周辺の林を捜索したが、佳代本もの箱も見つからなかった。原に置かれていた靴と囲巾から第者の痕跡は検されず、事件と事故の両方を定して捜査が続けられた。
佳代の机からは京きの片切符が見つかった。発は1225、列は午932分に松代駅をる予定だった。
さらに俊は、妻が失踪の2週に「この町から、誰もらない所へきたい」と話していたと証言した。夫婦関係は以からえており、佳代が婚を考えていたとも説した。
奈緒には信じられなかった。
母は確かに父と論することが増えていた。だが、娘を捨てて逃げるようなではなかった。
佳代は休みに奈緒と京の美術館へく約束をしていた。旅雑誌にはきたい所を赤いペンで囲み、幹線の刻まで調べていた。
「お母さんが京へこうとしていたなら、私との旅のためかもしれない」
奈緒が訴えても、父は聞こうとしなかった。
「盗んだで、おを連れていくつもりだったとでも言うのか」
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「お母さんは盗んでない」
「子どもには分からない」
俊は蔵庫に残っていたケーキを捨て、佳代の類を段ボール箱へ詰め始めた。事件からまだ1週も経っていなかった。
警察は宮本を捜索し、通帳、、計簿を持ち帰った。奈緒の部にあった赤い包も調べられたが、当は特に何も見つからなかったと記録されている。
学が始まると、奈緒は教で避けられるようになった。机のに《棒の娘》とかれたを入れられ、廊ですれ違った保護者からも顔を見られた。
俊が営んでいたさな運送会社にも取引止の連絡が相次いだ。半、父娘は松代をれ、俊の兄がむ埼玉県へ移った。
移転先でも、俊は佳代の話をしなかった。奈緒が母の写真を飾ろうとすると、「忘れた方がおのためだ」と取りげた。
それでも奈緒は、母が残した料理のを忘れなかった。クリームシチューをべるたび、で鍋を温めながら帰りを待った夜をいした。
事件から2か、俊の会社が抱えていた借が突然理された。約1800万円あった借入のうち、片瀬建設に対する債務が全額免除されていた。
当の捜査員もその事実を把握していたが、片瀬建設側は「今の継続取引を提とした経営支援」と説した。妻の失踪によって被害を受けた夫を助けただけだと主張し、それ以の捜査はわれなかった。
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信用庫は2800万円の損失を処理し、佳代を懲戒解雇した。本のまま、内部調査報告には《の勤務で得た識を利用し、現を正に持ちした疑いがい》と記載された。
だが佳代は、現を扱う窓担当ではなかった。
彼女が受け持っていたのは、休眠座の理と古い帳票の移作業だった。その事実は報されず、奈緒も23までらなかった。
奈緒は学で会計を学び、保険会社の内部監査部へ就職した。数字の違を追う仕事を選んだのは、母が何をしていたのかりたかったからかもしれない。
35歳になっても結婚はせず、父とはに数回会うだけだった。俊は60歳を過ぎると会社を畳み、松代からしれた団で1暮らしを始めていた。
佳代について尋ねると、父の答えはいつも同じだった。
「調べても、おが傷つくだけだ」
その言葉を、奈緒はい、娘を守る父親の忠告だとっていた。
20219、松代駅の旧商で再発が始まった。廃業した清計を解体していた作業員が、の壁の向こうに図面にない部を発見した。
そこには、かつて商主たちが共同で使っていた貸庫が残されていた。
扉の奥から見つかったのは現ではなく、錆びた鉄製の箱だった。
箱には、23に失踪した宮本佳代の印鑑が入っていた。
鉄製の箱が見つかったという連絡は、松代の警察から俊へ届いた。