"家族席から外された弟" 第2話
と教えている気がした。
「今は言えなかった。でも、は同じ働き方をしない」
に着いたのは午だった。蔵庫には、妻がに使っていた青いレシピノートがある。私はそれを材と同じ所に置き、毎必なページだけスマートフォンで撮ってへっていた。
ところが、蔵庫のの籠にあるはずのノートが消えていた。
私は台所の棚、仕事鞄、の荷台まで探した。澪も黙って机のをのぞいたが、青いノートは見つからなかった。最に見たのはで、駅ビル用の試作品について兄から相談されたの朝だった。
相談と言っても、兄は分量を尋ねただけだった。私は商品化するなら条件を話したいと答え、ノートはかなかった。兄は「内なのに細かいことを言うな」と笑い、そのの夕方、母ががへ野菜を届けに来ていた。
母へ話すると、しばらく沈黙したあと、「借りただけよ」と答えた。
「誰が?」
「雅。しいの試作に必なんですって。章平なら分かってくれるとって」
私は声を荒らげそうになり、隣にいる澪を見て抑えた。「今夜に返してほしい。あれはの備品じゃない。由佳のノートだ」
母は困ったように息を吐いた。「お父さんのお祝いのに兄弟喧嘩を始めないで。駅ビルの話が決まれば、みんな楽になるのよ。
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あなたにだって、いずれきちんとした役を用するって雅が言っている」
にも、同じ言葉を聞いた。父が倒れた、私は会社の調理主任だった。をかだけ伝ってほしいと言われ、休職した。かが半になり、会社へ戻る期限を失った。兄は当、宅設備会社の営業職で、男だが調理はできないから経営を担当すると言った。
父名義だったはに法化され、兄が代表になった。私は判を押すに呼ばれなかった。父から「兄弟で支えろ」と言われたが、株式の配分も役員報酬もらされなかった。質問すると母は、父の血圧ががるからにしてくれと言った。
翌朝、私はいつも通り起きた。しかし作業着には着替えず、過分の与細、勤務の帳、配達先とのメッセージを机へ並べた。帳には毎の勤刻と退勤刻、作った個数、急な配達がいてある。妻がくなってから、澪の学事へるためを把握しようと記録していたものだった。
午、兄から話が来た。「どこにいる。炊飯器が台止まった。百ににわないぞ」
「今はかない。今の雇用条件を面で話すまで、通常シフト以の仕事は引き受けない」
「通常シフトって何だ。おまえは族だろ」
「帳簿では週のパートだ。
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今は勤務になっていない」
話の向こうで属製の蓋が落ちる音がした。兄はい声で、「父さんのを潰す気か」と言った。
「、を潰さないために働いた。今来ないだけで潰れるなら、それを隠して百ので舗を発表したに聞いてくれ」
私は話を切った。が震えていた。爽ではなかった。これから与を失うかもしれない恐怖と、の同僚へ負担を押しつける罪悪があった。
午半、最のパート従業員・久美子からメッセージが届いた。《章平さん、今は休みでいい。けれど、献表が庫にも共フォルダにもない。雅さんがあなたの端末で管理していたと言っている》
私は自宅の古いノートパソコンをいた。献表や仕入れ量の計算は、私個のクラウド領域に保していた。に正式なシステムがなく、兄に何度提案しても費用がかかると断られたためだ。私はデータを消さず、共リンクだけを止した。の仕事を妨害するためではない。誰が何を作り、誰が管理しているかを曖昧にしたまま、事業へコピーされないようにするためだった。
過ぎ、兄と母がへ来た。兄は青いノートを持っていたが、玄関へ入るなりテーブルへ投げた。
「たった冊のノートで騒ぎやがって。のは父さんのものだ。
おまえがしきしたからって、自分の財産だとうな」
澪が学へたでよかった。私はノートを確認した。