"家族席から外された弟" 第1話
「章平、おまえは族席じゃない。配膳が終わったら厨に戻ってくれ」
兄の雅は、ホテル宴会の入で私の胸元を見ながら言った。父・俊の還暦祝いと、実の弁当《よし》創業周を兼ねた席には、親戚、仕入れ先、元の商会関係者まで百くが招かれていた。
私は歳だった。父が脳梗塞で倒れてから、午半に起き、米を研ぎ、煮物を作り、配達を運転してきた。に妻を病気でくしてからは、学の娘・澪を育てながらにっていた。
それでも肩は「伝い」だった。帳簿は週のパートで、実際に働いたの半分も与には反映されていない。父からは、族のが落ち着いたら埋めわせると言われ続け、母からは、兄が経営を覚えるまで辛抱してほしいと頼まれていた。
宴会の料理のうち、板商品の鯖の噌煮と椒入りの卵焼きは、私がホテル側の厨で仕げた。ところが会入の席次表に、私と澪の名はなかった。受付台の脇には《株式会社よし 代表取締役 瀬雅》と印刷されたしいパンフレットが並び、兄の妻・恵理が来客へ笑顔で配っていた。
「澪も厨にいろというのか」
「子ども用の席なら端につ用できる。でも、おまえが座ると取引先に説が面倒なんだ。
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婚したわけでもないのに男で娘を育てて、正式な役職もない。うちの体制がっていないように見えるだろ」
妻と別したことまで、兄はの備のようににした。私は反論しかけたが、制姿の澪がしれたところにっているのが見えた。学の吹奏楽部を休み、祖父の祝いだからと伝いに来ていた娘は、聞こえないふりをして袋を畳んでいた。
「分かった。料理をしたら帰る」
「今は父さんをてるだ。変な空気にするなよ」
兄はほっとしたように私の肩を叩き、会へ入った。ステージでは、父が母と並んで記写真を撮っていた。父は杖を使えば歩けるまで回復していたが、に麻痺が残り、い会話では言葉が詰まる。私と目がうと度だけ眉をかしたが、何も言わなかった。
乾杯が始まる直、司会者が《よし》の歴史を紹介した。父がで始めたさな惣菜を、男の雅が代にわせて法化し、宅配事業へ広げたという筋きだった。毎朝の献を考え、介護施設向けに塩分を調し、配達先を件から百件まで増やした私のは、紹介文のどこにもなかった。
やがて型スクリーンに、事業《MUSUBI KITCHEN》の映像が映った。若い女性が鮮やかな弁当をき、「昔ながらのを、働く世代へ」と微笑む。
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兄は壇で、来から駅ビルに号をすと発表した。
画面に並んだ種類の弁当を見て、私は息を止めた。妻が抗がん剤治療でもべられるよう夫し、澪と何度も見して完成させた「柚子鶏そぼろ」。父の濃いを変えたくない兄に反対され、では度も正式販売されなかった献だった。
パンフレットには、《代表・瀬雅が、族へのいから発》とかれていた。
「お父さん、これ……」
澪が震える声で言った。私は娘のからパンフレットを取りげた。
その、壇の兄が私を指した。
「本の料理を支えてくれた厨スタッフにも拍をお願いします。弟の章平です。昔から表にるのが苦でしてね」
百が斉に振り返った。笑顔で拍する々ので、私は汚れたのままっていた。兄は私の沈黙を謙虚さに作り替え、私の仕事を自分の物語に取り込んだ。
私はをげなかった。澪のを取り、厨へ戻った。残りの料理をホテルの担当者へ引き継ぎ、を脱いだ。
帰りので、澪は窓のを見たまま言った。
「お父さん、悔しくないの?」
「悔しいよ」
「じゃあ、どうして何も言わないの」
信号が赤になった。私はハンドルからをし、えた指を握った。から同じ理由で黙ってきた。父の治療費、母の活、で働くのパート従業員、そして、妻をくした直に仕事を失うわけにはいかなかった自分自。
だが、その理由を並べるたび、澪には「するのがだ」