みかん小説
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"毎日パンを持ち帰る少女" 第3話

だから本当なら持って帰って見せろと言った」

は、すぐにはを理解できなかった。

「パンがることを確認するために?」

「そうだ」

については、学から献表もお配りしていますが」

には何とでもける」

節子が慌てて父をたしなめた。

「先にそんな言い方しなくてもいいでしょう」

しかし正蔵は気にする様子もなかった。

「学が悪いと言ってるんじゃない。子どもに毎パンをわせるなんて、そんなうまい話があるかとっただけだ」

は戸惑った。

38の今、学は珍しいものではなくなりつつあった。なくとも桜ヶ丘では毎ており、パンも週の半で提供されている。

しかし正蔵には、それがどうしても信じられないらしかった。

その、芳は茶箪笥のに目を留めた。

に、乾いたコッペパンがつ置かれていた。半分ほど残ったパンで、表面はくなり、端がし反り返っている。

「それは……」

が見ると、節子が恥ずかしそうに笑った。

「昨美が持って帰ってきたものです」

「召しがらないんですか?」

「父は見ればそれでいいと言って、毎回置いておくんです。次のには私が片づけますけど」

は正蔵へ線を戻した。

「せっかく美さんが持って帰ってくるのに、べないんですね」

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正蔵は眉を寄せた。

「孫の昼飯を寄りがってどうする」

その答えはもっともだったが、それだけでは説できないものが残った。

「では、見るだけで?」

「ああ」

「毎?」

「毎だ」

正蔵はそれ以話したくないというように、再び聞を広げた。

庭訪問を終え、芳が玄関へ向かうと、節子がまで見送りにてきた。戸かられたところで、節子は声で言った。

「先、すみません。父は昔からし頑固で」

「いえ。でも、どうしてそこまでのパンにこだわるんでしょう」

節子は庭先の洗濯物を見ながら、しばらく考えた。

「戦争の頃のことが関係しているんだといます」

「戦争?」

「父はあの頃、べ物でずいぶん苦労したらしくて。でも詳しいことは、私にもほとんど話さないんです」

「節子さんにも?」

「はい。聞こうとするとるんです」

が吹き、物干し竿のぬぐいが斉に揺れた。

「だから私も、美がパンを持って帰るくらいならとって黙っていました。でも学で変な噂になっているなら、もうやめさせた方がいいでしょうか」

はすぐには答えなかった。

茶箪笥に置かれた乾いたパンが、なぜかかられなかった。

「もうしだけ、様子を見ましょう」

そう答えた自分自にも、その理由はまだ分かっていなかった。

5に入ると、美がパンを持ち帰っていることは、52組のほとんどの女子がるようになっていた。

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誰かが面半分に言いふらしたわけではなくても、毎同じことをしていれば自然と目につく。男子のにも「原んちはパンを買えないらしい」とにする者が始めた。

はそのたびに注したが、子どもというものは教師ので黙っても、帰りではまた別の顔を見せる。あるの放課、芳が職員へ戻る途、昇の裏から数の声が聞こえてきた。

「今も持って帰った?」

「持ってたよ」

「やっぱりが貧乏なんじゃない?」

「うちのお母ちゃん、パンで買えば10円もしないって言ってたぞ」

「じゃあ何で毎?」

その輪のに、美はいなかった。

はすぐに声をかける代わりに、れたところで子どもたちを見ていた。悪だけで話している者はなく、むしろ「理由が分からないこと」に興を持っているだけなのだろう。しかし当事者にとっては、好奇も悪も同じように傷つくことがある。

、芳美のくを通った。

美はいつものようにパンを半分べ、残りをで包んでいた。

「今は全部べてもいいのよ」

声で言うと、美はし驚いた顔をした。

「でも、おじいちゃんが」

「持って帰らなかったらる?」

るというか、聞きます。今はパンじゃなかったのかって」

「毎、楽しみにしているの?」

美は首を傾げた。

「楽しみじゃないといます」

「じゃあ、どういうじ?」

女はパンを包むを止め、し考えた。

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