みかん小説
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"卒業写真にいた父" 第10話

今では庭用カメラを持つも増えている。

旅へけば何枚も撮る。

子どもの誕も、運会も、で写真を残すが増えた。

それは便利なことだ。

でも昔は、写真館へくという為そのものが特別だった。

をえ、髪をとかし、族で並ぶ。

枚しか残らないかもしれないから、皆が真剣にカメラを見る。

その枚の側には、写っていない活がほどあった。

午になり、客がなくなった頃、坂が健司へ古い箱を見せた。

にはフィルムの袋や注文票が入っている。

「組のネガ、まだありました?」

「もう処分した」

健司はし驚いた。

「そうですか」

「おさんの写真だけは焼いて残した。もう分だろ」

「はい」

健司は写真を取りした。

何度見ても、父の姿はさい。

らないが見れば、ただの通だとうだろう。

しかし健司にとっては、今や38の子どもより先に目に入る。

「お父さんは、もうくなってるかもしれないな」

坂がぽつりと言った。

健司は頷いた。

「そうかもしれません」

「探すか?」

その問いは何度か自分でも考えていた。

戸籍をたどることはできるだろう。

親戚へ聞けば、何か分かるかもしれない。

きているなら会える能性もある。

だが健司は首を振った。

「今はいいです」

「そうか」

「会いたくないわけじゃない」

健司はし考えてから続けた。

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「でも、この写真をったからって、急に父親を探さなきゃいけない気がするのも違うとって」

坂は黙って聞いている。

「父はあの、度だけ僕を見たかった。それで帰った。今は、それをれただけで分です」

いつか気持ちが変わるかもしれない。

父の所を調べたいとうが来るかもしれない。

そのは、そのに決めればいい。

写真が見つかったからといって、が劇に変わらなければならないわけではない。

「健司くん」

坂が呼んだ。

「はい」

「子どもの頃、嫌いで写真を渡さなかったんじゃない」

健司は笑った。

「それ、あの言ってほしかったですね」

「そうだな」

「僕、本気で嫌われてるとってましたから」

「悪かった」

「もう何度も聞きました」

ともし笑った。

それで分だった。

夕方、坂が先の「営業」の札を裏返した。

い町にあった写真館が、そので終わった。

健司はからを度振り返った。

昭40のあの。

ここに12歳の自分がっていた。

のには父がいた。

カメラの向こうには、迷いながらシャッターを切った坂がいた。

誰も正解をらなかった。

ただそれぞれが、そのの自分にできる選択をした。

そして、その選択の結果として、枚の写真だけが何も封筒のに残った。

健司は胸元の封筒を軽く押さえた。

今度は、自分ので持ち帰るために。

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京へ戻った夜、健司は自宅の卓に卒業写真を置いた。

妻は議そうに写真を眺めた。

「これ、あなた?」

「から番目」

「本当だ。面ある」

妻は笑ったあと、健司の表を見て尋ねた。

「どうしたの?」

健司はし迷い、それから写真館で聞いた話を最初から話した。

12歳の卒業の。

自分だけ記写真をもらえなかったこと。

い、写真館の主に嫌われているとっていたこと。

閉ので古い封筒を渡されたこと。

そして、写真の端に父親が写っていたこと。

妻は途でを挟まず聞いていた。

話し終えると、もう度写真を覗き込んだ。

「この?」

「うん」

「さいね」

「言われないと分からない」

「でも、あなたには分かる?」

健司はしばらく考えた。

「顔はよく分からない。でも父だって聞いたあとだと、そう見える」

妻は頷いた。

「会いたい?」

「分からない」

それが正直な答えだった。

子どもの頃なら、別の答えだったかもしれない。

父親がなぜいないのか。

なぜ会いに来ないのか。

なぜ自分には普通の族がないのか。

考えたことはある。

しかしになり、自分も庭を持った今、親子という関係が血だけで簡単に元へ戻るものではないことも分かっている。

「でもね」

健司は写真を見ながら言った。

「らないままよりは、よかったとう」

母がくなった今でも、父と母のに何があったのかは分からない。

どちらが正しかったのか。

父がどんな夫だったのか。

なぜ母があれほど会わせたがらなかったのか。

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