"3人の息子は、夫の隠し子だった" 第13話
――このでは、正しいことより、の名を守ることが優先される。あなたまでその考えにみ込まれてはいけない。もし自分ので選べないが来たら、斎藤の妻ではなく、藤原綾音として何を望むか考えなさい。
最には、私が学代に描いたさな展覧会の絵を見たことがあるとかれていた。
――ので子供へ傘を差しす女性の絵を覚えている。顔は描かれていなかったが、あの女性には確かながあった。あなたも同じものを持っている。どうか忘れないでほしい。
読み終えた私は、を膝に置いたままい泣いた。義父がきているうちに助けてほしかったといういもあった。気づいていたなら、なぜもっとく止めてくれなかったのかと責めたい気持ちもあった。それでも、暗い敷ので私の本当の名を覚えていたがいたことは、静かな慰めになった。
義父はとともに、わずかな個資産を私へ遺贈するも残していた。法な続きにはがかかったが、最終に受け取ったは私のものにはしなかった。部をの教育費として確保し、残りの部を、庭の事で学ぶ所を失った子供たちが絵や本に触れられる基へ寄付した。
その判断を田弁護士へ話すと、「斎藤への仕返しに使うとっていましたか」
広告
と私が冗談を言うに、彼女はさく笑った。
「あなたは、仕返しより難しいことを選んだのだといます。受けた傷を、次の誰かを傷つける具にしなかった」
私は首を横に振った。いつも派でいられたわけではない。総郎や由が苦しめばいいと願った夜もある。息子たちの名さえ見たくないもあった。それでも、その醜いを抱いた自分まで否定しなくなっていた。傷つけられれば憎む。怖ければ逃げたいとう。それはさではなく、として自然な反応だった。
切なのは、にのき先まで決めさせないことだった。
休みのある、私は支援施設から許を得て、蒼太と陽斗にだけ会った。はまだ会う準備ができていないと言ったため、同させなかった。面会へ入ると、陽斗は私を見るなり子のろへ隠れ、蒼太は唇を固く結んだ。
「迎えに来たの?」
蒼太の問いに、胸が痛んだ。期待しているのか、拒絶したいのか、8歳の表からは読み取れなかった。
「今は、2の切なものを渡しに来たの」
私は写真と育児記録を入れた箱を机へ置いた。アルバムをき、写真の付と、そのにあったことをつずつ説した。蒼太が初めて歯を失った。陽斗がをし、朝まで私のを握っていた夜。2は黙って聞いていた。
広告
「私は、もうあなたたちのお母さんとして緒には暮らせない。を守らなければならないから」
陽斗の目に涙がたまった。私は抱きしめたい衝をこらえた。途半端な優しさで期待を持たせることは、彼らのためにならない。
「でも、緒にいたが嘘だったわけではないよ。2がきていて、できる所できくなってくれることを願っている」
蒼太はアルバムを抱え、うつむいたまま尋ねた。
「に、ごめんって言ったら、いつか会える?」
「が会いたいとえるようになったらね。謝れば必ず許してもらえるわけではない。でも、度と同じことをしない努力はできる」
面会を終えて廊へたとき、が震えた。これでよかったのか、答えはすぐにはない。それでも、した記憶とれる決のどちらか方を偽物にせず、両方を抱えて歩くしかないのだとった。
婚から2、私とはし広い部へ引っ越した。窓の向こうにさな公園があり、には桜が見える。仕事机の隣には専用の机を置き、壁には2の絵を並べた。
私は児童だけでなく、学や支援施設で絵の教もくようになった。言葉で気持ちを伝えるのが苦な子供たちに、や形で表現する方法を教える仕事だ。収入は斎藤にいた頃の活費とは比べものにならない。
それでも自分で働き、自分で使いを決められるおには、数字以の価値があった。