"3人の息子は、夫の隠し子だった" 第1話
「覚悟はできているんだろうな。斎藤のを度たら、度と戻れるとうなよ」
斎藤総郎は署名済みの婚届を、磨きげられた黒檀のテーブルに滑らせた。窓のでは真のが庭を濡らし、広すぎるリビングには炉のが燃えていたが、私の指先はしも温まらなかった。
ソファのでは、8歳の蓮、6歳の蒼太、4歳の陽斗が、輸入品のブロックを奪いっていた。3とも仕てのよいを着ている。けれど部の隅につ5歳のだけは、袖の伸びたセーターを着て、私の顔をそうに見つめていた。
「ええ。覚悟はできているわ」
私は婚届を拾い、記入欄を確かめた。5の結婚活が、い1枚で終わる。その事実をしいとはわなかった。むしろ胸の奥にあったい扉が、ようやくき始めたような気がした。
総郎はい脚を組み、勝ち誇ったように元をゆがめた。
「それで、慰謝料はいくら欲しい。現か、マンションか。それとも会社の株をし寄越せと言うつもりか」
「何もいらない。ただ、を連れていくわ」
その瞬、部の空気が変わった。総郎は眉を寄せ、初めて私を真正面から見た。なぜ私が、斎藤の跡取りである3の息子ではなく、ので邪魔者のように扱われてきた娘を選ぶのか、理解できないらしかった。
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蓮がブロックをに投げた。
「を連れていったら駄目だよ。僕の宿題、誰が写すの」
「僕と遊ぶ約束もしてるんだぞ」
蒼太が続き、陽斗はから取りげた苺のケーキを抱えたまま、「まだ全部べてない」と泣き声をげた。の肩がびくりと揺れた。兄たちにとって、妹は族ではなかった。言うことを聞かせ、物を奪い、嫌が悪ければ傷つけてもよいだった。
「聞いただろう。この子たちは妹を必としている」
総郎の言葉には、疑問さえなかった。が息子たちに仕えることは当然で、私が4全員の世話をすることも当然なのだ。
「それに、おは5も働いていない。絵の具を塗ったでも売って、この子を育てるつもりか」
22歳で結婚したとき、私は美術学の学院へ推薦されていた。恩師は、私の絵にはが隠した痛みをすくいげるがあると言ってくれた。しかし総郎は、斎藤の妻がで働く必はないと言い、義母の静子は、女の絵など銭にもならないと笑った。
私はを置いた。総郎を支え、子供たちを育て、族という居所を得るためなら、それも幸せなのだと自分に言い聞かせた。けれど、その活は最初から偽物だった。
結婚式の翌、まだ首も据わらない蓮が敷へ連れてこられたのことを、私は今でも鮮に覚えている。
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総郎は、縁の女性が病気で育てられなくなった子だと説し、静子は「斎藤が救ってあげるのだから、あなたもびなさい」と私に抱かせた。突然のことに戸惑いながらも、蓮がさな指で私の差し指を握った瞬、守らなければならないとった。
夜泣きが続けば私が抱き、をせば晩額をやした。初めて「ママ」と呼んだには、総郎より先に泣いた。2に蒼太、その2に陽斗が同じような説で加わったときも、自然だといながら疑うことを自分に禁じた。子供のでを詮索するのは残酷だと考え、むしろ疑った自分を責めたのだ。
を妊娠したと分かった、私はようやく総郎との子を授かったびを伝えた。ところが彼は仕事のメールから目もげず、「女なら静かに育てろ」と言っただけだった。産、静子は病へ来てもを抱かず、蓮たちの夕が遅れると私を叱った。私は産1週で台所へ戻り、傷の痛みに耐えながら4分の事を作った。
それでも、いつか族になれると信じた。蓮が私を母と呼んだ記憶、蒼太が発した夜に胸へしがみついた触、陽斗が初めて歩いたときに向けた笑顔。それらがすべて嘘だったわけではないといたかった。だから鑑定を見つけてからも半、私は敷をられなかった。
真実を認めれば、自分が母として注いだ5まで消えてしまう気がしたからだ。
「確かに、3を連れていく力は私にはないわ」