"私の名前を消した夫" 第3話
尚弥の会社の資が止まった夜のことを、しおりはいした。
彼はこのスタジオのソファに座り、両で顔を覆っていた。
「今回の事を取れなかったら終わりだ」
声は掠れていた。
「取締役の連は俺をろす。ももう貸してくれない」
その夜も、しおりは徹夜で図面を修正していた。
け方3を過ぎた頃、から突然血が落ちた。
い図面の端に、赤い滴が広がった。
20分ほど止まらなかった。
それでもしおりは、血が止まると壁から絵をした。
昔から付きいのある画廊へ連絡し、5億円で売却した。
翌、そのはプロジェクトの初期資本として会社座へ入った。
尚弥は泣きながら彼女のを握った。
「絶対に無駄にしない」
しおりは、その言葉を信じた。
玄関の子錠がく音がした。
音がづく。
尚弥がスタジオへ入ってきた。
式典の晩餐会から戻ったばかりなのだろう。級シャンパンとの匂いが混じっていた。
「どうして気もつけないんだ」
尚弥は照をつけた。
眩しいに、しおりはわずかに目を細めた。
「宴会で君を探したぞ。黒田から、1で帰ったと聞いた。話もないし、太陽キャピタルの連だって君を探していた」
尚弥はスーツの内ポケットから、黒いベルベットの箱を取りした。
製図机のへ置く。
「先、宿で見ていただろ」
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ヴァンクリーフ&アーペルのネックレスだった。
「秘に買いにかせた」
しおりは箱を見なかった。
「マスコミが私を探していたの?」
「ああ。基幹技術の特許に君が関わっていることはっているからな」
尚弥が肩へを伸ばした。
しおりは半歩がった。
彼のが宙に止まる。
「しおり。今のことをっているのは分かる。だが会社全体の利益を考えてくれ」
尚弥は、取締役会でよく使う説得の調になった。
「投資が聞きたいのは配管の数字じゃない。ストーリーなんだ。若く、華があり、カメラので話せるが必なんだ。優はそれができる」
「だから、私の名を消したのね」
「それだけじゃないか」
「私の招待状を優に渡して?」
「細かいことにこだわるな」
尚弥の声がしくなった。
「特許名義は君のままだ。俺がこのプロジェクトをランドマークに育てたのも、全部俺たちの庭のためだろ」
「庭」
しおりがさく繰り返した。
尚弥は蔵庫からを取り、気に半分んだ。
「それより許はどこだ?」
しおりは彼を見た。
「朝から施チームを入れる。都備局が特許使用許の原本を確認しないと着許を最終確定できないと言っている。署名済みだろ?」
「してない」
尚弥のが止まった。
「何?」
「許は今、佐藤弁護士に廃棄するよう指示した」
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数秒、空気が止まった。
尚弥は持っていたグラスをキャビネットへ叩きつけた。
氷がへねた。
「お、何をしたか分かっているのか!」
彼は股でづいた。
「許がなければ事が止まる。投資もマスコミも全部見ているんだぞ。今ここで止めたら会社がぬ!」
しおりはかなかった。
「会社がぬことと、私に何の関係があるの?」
尚弥の顔が張った。
鳴れば怖がる。
く言えば折れる。
今までどこかで、そうっていたのだろう。
だが、しおりの目にりすらないことに気づいた、尚弥の声がし落ちた。
「頼む。この期にで全部壊すな」
「?」
「君は昔、もっと物分かりがよかった」
その言葉で、しおりのに残っていた何かが切れた。
物分かりがよかったから、夫の接待が続く夜も1で図面を描いた。
物分かりがよかったから、自分の財産5億円を何も言わず会社へ入れた。
物分かりがよかったから、今、会のへ追いされても声をさなかった。
尚弥はその沈黙を、踏みにじっても反撃しないさだとっていた。
「あなたの言う通りね」
しおりが言うと、尚弥の表がわずかに緩んだ。
「じゃあ――」
「先14」
しおりが続けた。
尚弥のきが止まった。
「何だ?」
「私が絵を売った5億円。あなたはドイツの設備会社への払いに必だと言った」
「それがどうした」
「翌15、その設備会社の本代理の代表者が変更された」
尚弥のまぶたがいた。
「しい代表は相原優」
何も言わない。
「今、優が着ていたドレス。