"私の名前を消した夫" 第1話
「申し訳ありません。招待者名簿にお名がありません」
警備員の腕が、会へ続く通を静かに塞いだ。
黒いスーツの袖の向こうでは、京国際リハビリテーション医療センターの着記式典が始まろうとしていた。レッドカーペットの先には巨なLEDスクリーンが設置され、スタッフたちが最の音響確認にり回っている。
神崎しおりは、そのからかなかった。
「もう度確認してください」
警備員は困ったようにタブレットを操作した。
「昨夜23に確定した最版です。藤堂グループ関係のVIP招待者は、藤堂尚弥様と相原優様のお2となっています。神崎しおり様のお名は……ございません」
画面には確かに、自分の名だけがなかった。
しおりは瞬、何も聞こえなくなった。
この医療センターの特殊圧病棟と術、その基幹となる構造設計を作ったのは自分だった。3かけて研究してきた技術であり、特許権者の欄にも「神崎しおり」と記載されている。
しかも、主催者から送られてきたVIP招待状と専用バッジは半に自分のスタジオへ届いていた。
それが、今は元にない。
数、夫の尚弥が「秘でまとめて管理しておく」と持っていったからだ。
しおりはスマートフォンを取りし、秘の黒田へ話した。
7回目の呼びし音で、ようやくつながった。
広告
「奥様?」
黒田の声のろでは無線の音が入り乱れていた。
「私、の受付にいるの」
話の向こうが、自然なほど静かになった。
「奥様……なぜ会にいらっしゃるんですか。代表から今はマスコミもく混雑するので、ご自宅で継をご覧いただくようお聞きになっているかと」
「私の名は、どうして名簿から消えたの?」
「それは……広報チーム側で臨の調がありまして」
「私の招待状は?」
黒田は答えなかった。
3分もしないうちに、彼は汗だくでってきた。
「奥様、とりあえずへ戻りましょう。もうすぐ記者が入ってきます」
「写真を撮られたら困るの?」
「今は京都の関係者も、太陽キャピタルの主投資も全員来ています。代表にとって非常にななんです」
しおりはを差しした。
「私の通証を返して」
黒田の顔が変わった。
その瞬だった。
会正面に黒い級が止まり、記者たちのフラッシュが斉にった。
からりた男を見て、しおりは目を細めた。
夫の藤堂尚弥だった。
先週、しおり自が座のテーラーで受け取ってきたオーダースーツを着ている。
尚弥はのへを差しした。
シルバーのハイヒール。
続いて、シャンパンゴールドのドレスを着た相原優がりてきた。
優が尚弥の腕を取る。
記者たちが斉に叫んだ。
広告
「藤堂代表! 本の設計理を発表される相原ディレクターですね?」
「今回のランドマーク事業を獲得できたのは、相原ディレクターの功績がきいと伺っています!」
優は慣れた笑顔でカメラへ向かっていた。
その胸元を見た瞬、しおりの線が止まった。
の縁取りが入ったVIPバッジ。
会に2つしかない特別だった。
1つは尚弥。
もう1つは、本来しおりに送られてきたものだった。
「黒田さん」
しおりは優から目をさず言った。
「あれ、私の招待状よね」
黒田の喉仏がいた。
「代表が……今は対な演を優先すると」
「私の名で入しているの?」
「そこまでは……」
しおりは腕計を見た。
「5分」
「奥様?」
「5分以内に尚弥をここへ呼んで。来なければ、自分でへ入る」
黒田は彼女の顔を見た。
いつも声を荒らげることのないだった。
だからこそ、本気だと分かったのだろう。
彼は無線を握り、そのまま会へっていった。
4分ほどして、尚弥が現れた。
「しおり」
彼は眉にい皺を寄せ、2メートルほどで止まった。
「どうしてここに来たんだ?」
夫が最初に発した言葉は、謝罪ではなかった。
しおりは彼を見つめた。
「私の名が名簿から消えているからよ」
尚弥は周囲を確認してから声を落とした。
「頼むから、と所を考えてくれ。今は太陽キャピタルの連も全員来ている。
半期の資調達も、俺の取締役会でのも、このプロジェクトにかかっているんだ」
「だから私を消したの?」