"ヤクザが凍りついた夜" 第3話
誠はそんな初のを度だけ見た。
震えている。
隣の田。
族がいる。
佐藤夫妻。
齢だ。
田。
逃げは入側だけ。
誠の線は静かだった。
だがのでは、いつのにか内の位置関係を確認していた。
子。
カウンター。
鍋。
入。
の距。
何も使っていなかった考が、本のとは関係なくき始めている。
誠はので苦笑した。
もう必のないものだとっていた。
美代子と結婚してから、できるだけざけてきたものだった。
「あなたは、誰かに勝たなくてもいよ」
妻によく言われた。
だから誠は争いを避けてきた。
こちらからをすことはない。
その考えは今も変わらない。
だが、理尽な暴力が目のの々へ向けられたまで、黙っていられるかどうかは別の話だった。
浜は黒田のところへ戻りながら笑った。
「面くない爺さんですね」
黒田は誠をじっと見つめた。
「まだはあるさ」
初はその言葉を聞き、胸の奥に嫌なものが沈むのをじた。
今夜、このは酒をみに来たのではない。
誰かを怖がらせたいのだ。
その相として、何も言い返さない78歳の老が選ばれてしまった。
黒田たちの酒がむほど、内の空気は悪くなっていった。
相馬はきな体を子にもたせかけ、浜は何度も周囲を見回した。
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常連たちが目をわせないことを、自分への従だとっているようだった。
「みんな静かだなあ」
浜が笑う。
「俺たちが怖いんですかね」
田は返事をせず、ビールをへ運んだ。
妻との息子がいる。
ここで勇気を見せて殴られても、族はばない。
ではそう分かっている。
それでも、目ので老が馬鹿にされ続ける景に、腹の底ではりが膨らんでいた。
佐藤夫妻も同じだった。
「じゃ、こんなでも贅沢なんじゃないの?」
浜が誠へ言った。
「なあ爺さん。ずいぶんちびちびんでるけど、ないの?」
相馬が声をてて笑った。
「俺たちが晩で使うの方がいかもな」
誠は黙っていた。
その言葉は、周囲にいる齢者たちまで侮辱するものだった。
佐藤は膝ので拳を握った。
妻は夫がちがらないよう、そのへ自分のをねた。
初も限界だった。
「もうやめてください。ほかのお客様の迷惑になります」
黒田がゆっくり顔を向けた。
「迷惑?」
「ここは皆さんが静かにむです」
瞬、内が静まり返った。
初は怖かった。
それでも目を逸らさなかった。
黒田は数秒彼女を睨み、それからで笑った。
「威勢のいいばあさんだな」
浜がちがり、誠のへ移した。
そしてカウンターに置かれた徳利へを伸ばす。
「あっ」
わざとらしい声とともに、徳利が倒れた。
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残っていた本酒がカウンターへ広がり、その部が誠のへかかった。
へ酒が滴る。
内には、その音まで聞こえた。
「悪いな、爺さん。が滑った」
浜は笑っていた。
誠は膝のハンカチを取り、濡れたを拭いた。
「丈夫です」
い声だった。
「何が丈夫なんだよ」
黒田がちがった。
子がろへ擦れ、乾いた音をてた。
「さっきから俺たちが話してるのに、その態度は何だ」
誠はハンカチをきれいに畳み直した。
角と角をわせ、元と同じように膝へ戻す。
そのあまりに落ち着いた仕を見て、初は奇妙な覚を覚えた。
怖くないのだろうか。
それとも。
怖がる必がない理由を、このだけがっているのだろうか。
「がいのか?」
黒田が歩づく。
相馬もちがり、誠の背へ回った。
185センチほどある男がつと、78歳の誠はさらにさく見えた。
「爺さん、礼儀ってものを教えてやろうか」
相馬が誠の肩へを置いた。
太い指がセーター越しにい込む。
初が息を呑んだ。
「やめてください!」
「黙ってろ!」
黒田が鳴った。
その瞬、田が子から静かにちがった。
「トイレ」
誰に言うともなく呟き、簾のへる。
浜は誠しか見ておらず、田のきに気づかなかった。
相馬は肩をつかんだまま力を入れた。
「てよ」
ところが、誠は引きずられるより先に自分からちがった。
ゆっくり。
ごく自然に。
そのきに相馬の体がわずかに揺れた。