"裏口に回された仕立て屋" 第10話
拓也が帰った、佐子は署名画像の入った確認をもう度見た。以は見るたび息子に裏切られたりが湧いたが、そのはし違った。
類はにより撤回され、教と補助窓にも訂正が届いている。原本データは定期保された、続きに従って削除される。なかったことにはならないが、今も効力を持って佐子を縛る類ではない。
佐子はコピーを捨てず、《終案件》のファイルへ移した。毎見える机のに置く必はなくても、自分が何を変えたかを忘れないために残すことにした。
その横には、つ針で初めて交わした契約がある。依頼者の署名だけでなく、担当するの名、変更の連絡方法、キャンセル料までかれていた。
があればを信用できるわけではない。それでも、誰かの善やへ頼るより、違ったに戻る所を作れる。
佐子は戸棚からしい糸をし、翌の仕事を分だけ準備した。夜遅くまで縫わないというの規則に従い、になるに照を消した。
自分で作った規則に、自分も守られる。その覚を、佐子は歳を過ぎて初めてった。
発表会から、美は学になり、域のダンスコンクールへることになった。理奈は自分でデザインし、縫製の部分もった。
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本番週、背のファスナーがきにくいことが分かり、《つ針》へ正式な修理依頼が届いた。依頼者欄は藤原理奈、作業内容と希望納期がかれている。
佐子は見積を返した。特急料を含む額に、理奈から《お願いします》と返信が来た。
修理の、佐子は理奈の縫い目を見た。より揃い、裏にも余裕がある。褒めると、理奈は「で毎直しているから」と答えた。
理奈は翌、さなネットショップをいた。最初から量注文を取らず、着まで。縫製は自分でい、難しい部分だけ部へ正式発注した。
佐子のと提携はしなかった。は仕事の基準も性格も違い、づきすぎれば再び揉めると分かっていた。
コンクール当、佐子は正面入から入った。自分で買った般席の券を係員へ見せ、央よりしろの席へ座った。
プログラムには《装デザイン・藤原理奈》《縫製・藤原理奈》《ファスナー調・つ針》とかれている。
理奈が演にやって来て、表記が正しいか尋ねた。
「違っていません」
それだけの会話だった。抱きうことも、をに流す言葉もなかった。
美は台央で踊った。佐子は今度こそ、幕の隙ではなく客席から全を見ることができた。装は理奈らしい胆なで、佐子なら選ばない形だった。
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途、の飾りがつへ落ちた。佐子はちがらなかった。美は気づかず踊り続け、演技を終えた。
完璧でなくても、台は止まらない。族も、仕事も、誰かがすべてを直さなくても続いていく。
終演、美がロビーへってきた。「おばあちゃん、見えた?」
「全部見えたよ」
佐子はそう答えた。には言えなかった言葉だった。
帰宅、作業台には翌週納品する唱団のブラウスが並んでいた。佐子は急いでミシンへ向かわず、まず温かい茶を入れた。
仕事は逃げない。納期も、自分たちで決めた範囲に収まっている。君と信子にはの始を連絡済みだった。
机の引きしには、最初の発表会で使った制作ノートが残っている。百の横に、当受け取った額としてゼロとかれていた。
佐子はその頁を破らなかった。無償だったを恥じる必はない。あの経験がなければ、自分の技術へ値段をつける難しさにも、のを守る必にも気づかなかった。
しい注文台帳をくと、担当者、作業、報酬の欄が並んでいる。誰が何を作ったか、から消えない形で残る。
翌朝、佐子は《つ針》のさな板をした。豪華なでも、全国へられたブランドでもない。それでも、で働くの名と仕事には、それぞれ正しい所があった。
台の照が消えても、縫ったのまで消えるわけではない。