"その家、私のです" 第10話
誰かが成したからといって、傷つけられたが褒美として関係を戻す必はない。は元嫁と元姑のまま、季節に度葉を交わす程度になった。そのさがあったから、互いを責めずに言葉を受け取れた。
婚から、修司は会社に残っていた。営業ではなく事管理の補助へ移り、以より収入は減った。美は経理課を辞め、別の会社へ転職したと聞いた。
修司から謝罪のが届いたのは、その頃だった。会社のためならにを担保にするだけだとったこと、婚を先に成させれば絵里が諦めると考えたこと、母親を理由にすれば断れないとっていたことがかれていた。
最に《やり直せないだろうか》とあった。
絵里は考えた。みだけで断るのか、自分に問い直した。答えは違った。
《謝罪は受け取りました。私は今の活を続けます。復縁はしません》
それだけをいて送った。
主任になった絵里は、翌に課代理へ昇した。収は結婚より百万円く増えた。残業も責任も増えたが、休に資格講座へ通い、会社の補助制度を利用して購買管理の認定資格を取った結果だった。
のは、さな仕事部へ変えた。千鶴子の介護用品が積まれていた所に机と本棚を置き、窓際には陶芸教で作った格好な瓶を飾った。
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産会社から、を売れば千万円になるという査定も届いた。絵里は売らなかった。値がりしたからでも、修司へ勝った証として残すためでもない。朝のが入る台所と、歩いてける商が気に入っているからだ。
もちろん、将来は売るかもしれない。で階へがるのが難しくなれば、さなマンションへ移る。そのは誰かに許を求めず、自分で決める。
の曜、表札をしくした。結婚は『』とだけかれていたが、婚、絵里は旧姓へ戻している。しい表札には『森川』と彫られていた。
取り付けていると、所の女性が通りかかった。「でこんな広い、変でしょう」と言った。
以の絵里なら、笑って同したかもしれない。そのは「掃除は変です。でも、気に入っています」と答えた。
広すぎる部のつは、に度、域の女性向けパソコン教に貸すようになった。会社で使う表計算やネット予約の方法を、絵里が数へ教える。参加費は費と教材費を賄う程度だが、が集まるはに笑い声が戻った。
を取り戻すことは、誰も入れないにすることではなかった。誰を招き、いつ帰ってもらうかを自分で決められる所にすることだった。
ある教の、代の参加者が婚を迷っていると打ちけた。
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「夫名義のだから、私には何も残らないとう」と言う。
絵里は自分の結論を押しつけなかった。「名義だけで全部決まるとも、くめば自分の物になるとも限らないそうです。まず資料を集めて、専に確認した方がいいですよ」と伝えた。
自分の経験を復讐談に変えるより、誰かがい込みで諦めないための言葉にしたかった。
その夜、絵里は計簿を閉じた。貯蓄はで百万円増えていた。修司と暮らしていたよりも旅も増えたのに、残るおも増えた。
誰かのを黙って埋め続ける活が終わったからだ。
台所で湯を沸かし、青い皿へ菓子をつ置いた。窓のには、修司が選んだ庭が残っている。を全部否定する必はない。楽しかったも、見過ごした違も、の壁のにあった。
ただし、これからの鍵は絵里が持つ。
玄関のでは、しい表札が灯に照らされていた。誰かの妻でも、誰かの嫁でもない、自分の名だった。
絵里はの研修資料を机へ置き、旅用の積座へ万円を移した。さな額でも、自分が選んだ未来へ積むおは、修司の会社を救うために差ししかけたよりずっと確かなものにえた。
婚したから幸せになったのではない。婚をきっかけに、も、も、働いて得たおも、自分で決める権利を取り戻した。
絵里は居の照を消した。は静かだったが、もう寂しいとはじなかった。