"その家、私のです" 第9話
指定の、千鶴子はで来た。以より背筋が伸び、杖には宅の堂でりったが作った飾りがついていた。
裁縫箱を受け取ると、封筒を差しした。には万円が入っている。
「んでいた最のの費。これでりるか分からないけど」
絵里は細を見せ、実際の負担分だけ万千円を受け取った。残りを返すと、千鶴子は「全部取ればいいのに」と言った。
「必な分だけでいいです」
「私を困らせたいんじゃないの?」
「困らせることが目なら、転居先の資料は渡しませんでした」
千鶴子はしばらく柱を見ていた。「あの、あなたがてけば、このは修司の物になるとっていた。修司がそう言うから信じたかった」
「私が悪い嫁なら、自分たちが正しい側にいられますからね」
「そうね」
千鶴子は初めて言い訳せず認めた。謝罪はく、「悪かったわ」とだけ言った。
絵里は「聞きました」と答えた。へ招き入れず、完全に解もしなかった。それでも千鶴子が帰る、駅までの坂が滑りやすいと伝えた。
、絵里は陶芸教でりった女性たちと野へ泊旅した。豪華な宿ではなく、朝付きのさな旅館だった。夕は各自で好きなを選び、翌朝も別が認められている。
絵里はで青い皿を買った。へ戻り、その皿に分の煮物を盛る。
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以は分を鉢へ入れ、自分は最にめた物をべていた。
通帳の残は急に何千万円も増えてはいない。けれど賃がなく、与ががり、誰かの会社や活を穴埋めしない。半で貯は着実に増えた。
おがあるとは、使い切れないほど持つことではない。自分のを、の失敗に勝に差しされないことだった。
旅から戻った翌週、千鶴子が転倒して入院した。病院から連絡を受けた修司は、仕事を理由に絵里へ付き添いを頼んだ。
絵里は断ったが、千鶴子の宅職員へ必な連絡先だけ伝えた。修司は「だ」と責めたものの、結局はを取り、入退院の続きをした。
、千鶴子から話があった。「来てくれなかったのね」と言われ、絵里は「修司さんがったと聞きました」と答えた。
「あなたの方が病院のことを分かっているから」
「だから、私に任せ続けたんですね」
千鶴子は黙った。数秒、「今の宅にも伝ってくれるがいたわ」と言った。費用を払う支援員、護師、送迎職員。嫁へ頼らなくても、活を支える方法はあった。
絵里は見いにはかなかったが、退院に滑りにくい杖先ゴムの売りを送った。関係を断つか、以のように世話をするか。その択ではない距を選べるようになっていた。
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千鶴子もしずつ、絵里を呼べば何でも解決する活を放した。体操教の友と病院へき、買い物代を利用した。費用がかかるたび文句を言ったが、その費用こそ、かつて絵里が無償で負っていた仕事の値段だった。
末、千鶴子からさな荷物が届いた。には絵里がをたに箱へ入れられた皿が枚と、《あなたの物を勝に分けたことも悪かった》というメモがあった。絵里は皿を器棚へ戻したが、話はしなかった。
謝罪を受け取ることと、以の関係へ戻ることは違う。千鶴子も返事を催促しなかった。それがにできる、最も現実な変化だった。
翌、千鶴子は宅のさな菜園で育てたミニトマトを送ってきた。箱には《たくさん採れたので、らなければ誰かにあげて》とだけかれていた。以のように恩を着せる言葉も、会いに来いという求もなかった。
絵里は半分を会社へ持ってき、残りを夕にべた。お礼には、販の菓子ではなくい葉を枚した。《届きました。甘くておいしかったです》。それ以はかなかった。
数、千鶴子から返事が来た。《来も作るかは分かりません。腰と相談します》。自分が倒れても続ける、族なら伝うべきだという以の千鶴子ならかなかった言葉だった。
絵里はその変化を嬉しいとった。
しかし、千鶴子を変えたのは自分だとは考えなかった。宅で分の暮らしを担い、必な助けへ料を払い、自分の体にわせて予定を決めるで、千鶴子自が覚えたことだった。