みかん小説
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"その家、私のです" 第8話

絵里はくのき、共同座から済みの額を分け、しい座へ移した。

元に残ったのは百万円余りとだった。持ちではない。それでも宅費がほとんどかからず、主任へ昇格した与が毎入る。計を計算すると、修司と千鶴子と暮らしていた頃より自由に使えるお万円増えた。

絵里は最初の万円で級バッグを買わなかった。壊れかけていた湯器の積、老度の旅費へ分けた。残り万円で、く習いたかった陶芸教へ申し込んだ。

主任の仕事は楽ではなかった。若い部のミスを引き受け、取引先との価格交渉でげるもある。それでも、に帰れば夕を自分で決められた。

ある、修司から《会社を辞めるかもしれない。し貸してくれないか》と連絡が来た。絵里は晩置き、《おは貸しません。活相談窓の連絡先を送ります》と返した。

修司から「たいな」と届いたが、返事はしなかった。助けないことと、幸を願うことは違う。絵里は修司の破滅を望んでいなかった。ただ、自分を救命ボートにすることを断った。

婚届を提した週末、絵里は実の墓へ報告にった。母がきていれば婚を止めただろうか、それともを守れと言っただろうか。答えは分からなかった。

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で、自分が正しかったと報告する気にはなれなかった。のうち、修司と笑ったもあった。千鶴子がインフルエンザになった夜、で交代しながら病したこともある。

に良いがあったからといって、最の裏切りを受け入れる必はない。最に裏切られたからといって、良いまで嘘になるわけでもない。絵里は結婚活をつの言葉で片づけるのをやめた。

主任選考の面談では、庭の変化を武器にはしなかった。発注ミスを減らすための確認順と、取引先別のリスク表を提案した。選ばれた理由は同ではなく、続けた仕事と研修の成果だった。

細に主任当が加わった、絵里は数字を何度も見た。修司から活費を受け取っていた頃より、自分で稼ぐ額はい。額以に、誰かの許で取りげられない収入だということがかった。

絵里は婚祝いの会をかなかった。代わりに、姉との庭を剪定した。伸びすぎた枝を本ずつ切ると、く暗かった居へ午が入った。切ったからぬのではなく、残した枝へが届く。その当たりのことが、自分の活に似ていた。

修司は貸付を断られたあと、会社の相談制度を利用した。社宅扱いの部へ移り、与から定額を会社へ返すことになった。

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絵里が助けなかったから破滅したのではなく、自分の責任を自分の収入で引き受けるが最初からあった。

度、修司はまで来た。から庭を眺め、インターホンを押した。絵里は録画画面で確認し、扉をけずに用件を尋ねた。

「自分の荷物が残っていないか確認したい」

会いのに確認しました。した物があるなら、面でらせてください」

分だけ話せないか」

絵里は断った。修司はしばらくっていたが、を越えずに帰った。以なら、かわいそうになってへ入れただろう。けれど境界は、相が穏やかなにこそ守らなければ、また曖昧になる。

、修司から求められたのは父親の形見の万だった。絵里は机の奥を探し、見つけると写真を撮って宅配便で送った。修司から《ありがとう》とだけ返ってきた。

敵として争い続けなくても、夫婦へ戻らずに事務なやり取りはできる。その距を保てた、絵里は婚が類のだけでなく、活のでも成したとじた。

千鶴子は齢者向け宅での活に慣れ始めていた。堂のい、隣のテレビがうるさいと満を言いながら、週回の体操教へ通った。

ある午、絵里へ話をかけてきた。「に忘れた裁縫箱がある。取りにきたい」と言った。

絵里はを決め、玄関で渡すと答えた。

千鶴子は「お茶くらいしてくれても」と言ったが、絵里はげなかった。

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